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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293190574/126-132 「あ~もう、この子ちょうカワイイ……。これぞ妹ってカンジするよね!」 「…………」 我が妹、桐乃は只今エロゲを絶賛プレイ中だ。……俺の部屋で。 なんで俺の部屋なのかというと、 『なんかさー、あたしの部屋の暖房調子悪いんだよね。だからしばらくアンタの部屋でやるから』 だそうだ。 リビングでやれと言おうとしたが、さすがにリビングでエロゲは無理だよな。 しかしエロゲやりたいがために、兄の部屋に居座る妹って……。 「ほら見て見て! この服の裾をキュッと握るトコとか、も~たまんない!」 ちなみに、桐乃の指さす先のモニターの中では、エロシーンの真っ最中である。 いたたまれねぇ……。コイツわざとやってるんじゃないだろうな。 「お前な、それで俺にどういうリアクションを求めてるんだ……。『そうだな、たまんねぇ!』って言えばいいのか?」 「うわ何それキモッ」 どうすりゃ良いんだよ。 「ねえ、喉乾いたし、飲み物とお菓子持ってきてくんない?」 挙げ句の果てにこれか。 「そんなの自分で――」 「あ、見て見て。この顔ちょ~エロ可愛いよね!」 「おう行ってくるぜ!」 くそっ、エロシーン終わるまではぜってー戻ってこねーかんな! リビングへ降りて適当に、飲み物と菓子を漁る。 え~っと、引き出しにスナック菓子がいくつかとポッキーがあったな。 あとは冷蔵庫にチョコがあったから、これも持ってくか。 しばらく時間を潰して部屋に戻ると、 「遅っ! 飲み物とお菓子持ってくんのに、いつまでかかってんの?」 ありがたい言葉で出迎えられた。うるせーな、こっちにも事情があんだよ。 「悪かったな。にしたって、お前には労いの言葉をかけようとか、そういう気持ちはないのか?」 ないよな。分かってるよ。 ところが、 『ありがとう、お兄ちゃん』 急に可愛らしい声が響いた。 「お前それエロゲの音声再生しただけだろうが!」 「はあ? アンタのご希望通りにしてやったんでしょうが。感謝しなさいよ感謝」 これである。可愛くねえ……。 「アンタちょっと代わりにやっててよ。あたし隣で見てるから」 「へいへい」 妹は水分補給&軽食タイムに入るようだ。その間は俺が代わりに進行する。 兄妹によるエロゲ協力プレイとか聞いた事ねえ。 だがもうこんなのは慣れっこだ。慣れたくなかったが。 ふと隣を見ると、桐乃がチョコの箱と睨めっこしている。何してんだ? 「どうした?」 「えっ? いや別に……つかジロジロ見ないでくんない? キモいから」 急にそっぽを向いてチョコを頬張り始める。相変わらずよく分からんヤツだ。 カチ、カチ、というクリック音だけが響く。 俺が黙々とプレイしているのもあるんだが……、さっきから桐乃が無言だ。 さっきまでは、はしゃぎながらプレイしてたくせに、急にどうしたんだか。 時折目を向けても、こっちをチラチラ見るだけで何も言わない。 何か怒らせちまったかな? そう思っていると、 「ねえ……京介」 きょ、京介!? 声に振り向いたところで、急に口の中に何かを押し込められた。 「ムグッ!? な、なにすんだ」 これは……チョコか? でもなんか変な味のチョコだな。香りが強いっていうか……。 慌ててさっきのチョコの箱を確かめる。 「これアルコール入りじゃねえか!」 しかも中身は空だ。コイツほとんど全部食ったのか? 「……んー?」 なんか返事が適当だ。顔も少し赤い。 「お前、もしかして酔ってる?」 「酔ってないしー」 酔っ払いはみんなそう言うんだよ、というフレーズが頭に浮かぶ。 いやいや、でも酒チョコ一箱くらいで酔うものなのか? つーか一口目で気付けよ! 「ねえ、これやりたい」 急にモニターを指差す桐乃。 画面に目を向けると、男女がポッキーの両側をくわえているシーンだ。 いわゆるポッキーゲームってやつだな。 「って、やらねえよ! 一人でやれよ!」 「バカじゃん? 一人で出来るわけないし」 そうだね。 酒入った相手に突っ込まれるとは……。 微妙に凹んだ俺をよそに、桐乃はポッキーを一本取り出す。 そして口にくわえて、「ん」とこっちに突きだしてきた。 「おいマジでやんのかよ! 無理だって!」 よく見たらコイツ顔が真っ赤だぞ。絶対酔ってるだろ! 「んー」 そのまま俺の口まで近付けてくる。 俺は口元を引き結んで必死に抵抗していたのだが……。 「ん、ん、ん」 今度は、くわえたままのポッキーの先端で、俺の口の周りをツンツンしてくる。 このままでは、俺の顔がチョコまみれになってしまうじゃないか。 つーかそれが目的じゃないだろうな。 ええい、仕方ない。 ポキッ 俺は、ポッキーの先端部に口をつけて、すぐに折り取ってやった。 少しとはいえ顔が近づいて、不覚にもドキリとする。 「ほ、ほら、これで良いだろ」 桐乃は不満顔だったが、仕方ないといった顔でポッキーの残りを食べている ふう、いや一時はどうなる事かと……。 「って何食わぬ顔で二本目を取り出すな!」 「え? だってまだあるし」 「使い切る気かよ! 俺をあと何回辱める気だ!」 「えっと…………、十五回」 いちいち数えたのかコイツは。酔っててもそういう事は出来るのね。 「それちょっとよこせ」 「あっ、ちょっと!」 桐乃からポッキーの箱を取り上げて、中身を一気に貪る。 よし、これで俺を脅かすものは無くなったぜ! 俺が安堵の溜息をついていると、 「……そんなにあたしとするの、嫌なの?」 当たり前だろ、という言葉を飲み込む。 桐乃はさっきまでとはうってかわって、沈み込んだ様子で―― 「あたしのこと、ほんとはウザいとか死ねとか思ってるんでしょ?」 それ、お前が俺にいつも言ってる事だよね? 「いや、お前何言って――」 「あたしのこと、嫌いなんだ」 悲しそうに、ポツリと呟いた。 その言葉に、何故か胸がチクリとする。 「そ、そんな事ねーって」 慌てて言い繕う。 「嘘」 「ほんとだって」 「……じゃあ好き?」 ぐ、と詰まる。 嫌いじゃないから好きとか、飛躍しすぎだろう。 酔ってるせいか、普段と様子がまるで違う。 俺が答えないでいると、 「やっぱり嫌いなんだ」 ああもう、どうすりゃ良いんだよ。 というか演技でからかってるんじゃないだろうな……。 俺が黙っているのをどう受け取ったのか、ついに目尻に涙まで浮かべ始める。 おいおいマジなのか? それとも泣き上戸とか、そういうやつなのか? 何にせよ、もうこっちが限界だ。コイツの泣き顔なんて見たくない。 酔った上での事なら、適当に合わせるくらい良いだろう。 「す、好きだぞ」 「……ほんと?」 「ああ、なんせ俺はシスコンだからな」 くそ、予想以上に恥ずかしいぞコレ。何の罰ゲームなんだ。 「じゃあ、証明して」 「どうすれば良いんだ?」 まだあるのか、と内心思ったが毒を食らわば皿までだ。 桐乃はしばらく言いにくそうにしていたが、意を決したように口を開くと、 「……キス、して」 しっかりと俺の目を見据えて、そう言った。 一瞬、思考が停止する。 キスって、俺と、桐乃がか? そんな事出来るわけ―― だが桐乃の目を見て、そんな考えは吹き飛んだ。 不安そうな、怯えているような瞳。 でもそれでいて、前に進もうとしているような、そんな目だった。 なんだか胸がザワつく。鼓動が早くなるのを自覚する。 何かが俺の中で変化していくような、そんな錯覚に囚われた。 ……俺も酔ってるのかもな。あんなチョコ一個で。 もう適当に合わせるなんてのは、やめだ。 酔いが醒めた後に酷い事になりそうだが、それも仕方ないと覚悟を決める。 こんな目をしている桐乃を、俺は放っておけない。 応えてやりたい。本心からそう思った。 桐乃の肩を掴んで引き寄せる。 一瞬身体を硬くした桐乃だったが、すぐに力を抜いて俺の胸に両手を添える。 少しの間、視線が交わって……そのまま唇を合わせた。 小鳥が啄むようなキス。 時間にして1秒もないだろう。 「こ、これで良いか?」 間が保たず、取り繕うように訊いてみる。 桐乃は顔を少し俯かせ、俺の胸を指で少しなぞっていたが、 「……もう一回、して」 甘えるような声音で囁いた。 「んっ……ちゅっ……」 もう一度唇を合わせ、今度は舌で少しだけ唇を舐めてやる。 桐乃も応えるように少し口を開け、舌をちょっとだけ出す。 「ん……んっ、ん……」 しばらくして、どちらからともなく離れた。 ほう、という吐息が漏れる。 桐乃は俺の服をキュッと握り、俺の肩に頭を乗せてきた。 俺はそのまま桐乃を抱きしめて、頭を撫でてやる。 なんだか安心したような顔でそっと目を瞑る桐乃。 可愛いな、こいつ。 柄にもなくそう思った。 しばらくの間そうしていると、規則正しい寝息が聞こえてきた。 酔いが回ってきたのかもしれない。 ――前にもこんな事があったような気がする。 子供の頃にベソをかいていた桐乃をあやして、眠るまで付き合った。 今の状況と、とてもよく似ている。 ただ一つ、早鐘のように鳴る俺の鼓動を除いて。 翌朝、酔いの醒めた桐乃に半殺しにされるとばかり思っていたのだが―― 「ま、まぁ今回の事はあたしも悪かったし? 特別に許してあげるから感謝しなさいよね」 という寛大なお言葉を頂いた。珍しい事もあるもんだ。 「でもあんたがあたしの、く、唇を奪った事は事実なんだから、責任とんなさいよ」 あれはお前が迫ってきたから仕方なく、なんて言うつもりはない。 紛れもなく俺自身の意志でした事だからだ。 「わかったよ。どうすれば良い?」 「そのくらい自分で考えたら?」 言うと思ったよ。 うーん、責任。責任ねえ……。 そこでふと閃くものがあった。 後から振り返ってみれば、自分でもちょっとどうかと思う。 でも思いついた時は何故か名案に思えてくるんだよな。あるよねそういう事。 「よし、桐乃」 「なに? もう決まったんだ」 「ああ。キスして良いか?」 は、と固まる桐乃。 「な、何言ってんのアンタ!?」 「いやだからさ、責任とってキスする事にした」 「意味わかんないし! キスした責任とって、キ、キスするとか!」 そう言われると返す言葉もないんだけどな。 「良いだろ。俺がそうするって決めたんだから」 しっかりと桐乃の目を見据えて言う。 「う……ちょっと……だって……」 「……ダメか?」 「か、勝手にすれば?」 どうやらお許しが出たようだ。 桐乃の肩を引き寄せ、そっと唇を合わせる。 ほんの少し触れるだけの、小鳥が啄むようなキス。 ちょうど昨日と同じだ。それならきっと、この後も同じなんだろう。 「これで良いか?」 「……もう一回して」
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/456.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1301391825/19-26 ある日の夜、わたしはとある対戦ゲーム――『真妹大殲シスカリプス』のネット対戦のためにパソコンの前に鎮座していた。 わたしはRAPを巧みに操作しながら対戦相手の一瞬の隙を掻い潜り、超必殺技の2回転投げを叩き込んだ。決める難度は高いが一撃必殺の破壊力を誇るそれは相手の体力をみるみる奪う。 そして示された”YOU WIN!”の文字。 「ふふ、これで拙者の勝ち越しでござるな京介氏」 パソコンに表示される金髪ロールに渦巻きメガネのアバターが先程の対戦相手――京介さんへとコメントを表示する。 今のわたしは対外的には『沙織・バジーナ』であるから。 『くそー、さすが沙織は上手いな。黒猫ほどじゃないにしてもダイヤ有利なはずなのに負け越すとは』 京介さんのアバターは桐乃さんのメルルである。基本的に1つのゲームには1つのアカウントしか取れないため、自分のアカウントは作れないのだろう。 「相手が勝ち誇ったときそいつは既に敗北しているのでおじゃるよ。京介氏は有利に立ったときの立ち回りがおろそかに感じまする」 『うーむ、確かに言われてみればそうかもしれないな。もっと練習しなきゃな』 「精進めされよ、でござる」 まだ会話が終了してはいないけれども、わたしはキーボードに伸ばしていた手をだらりと下に降ろし、背もたれに体を預けて伸びをした。 格闘ゲームは他のゲームよりも一戦ごとの集中力が多くかかるので疲れやすい。 それにしても。 (相変わらず、なんて妹思いの方なんでしょう……京介さんは) 忌憚なく彼女は心の中で思った。 文字通り妹キャラしか登場しない『シスカリプス』をプレーするのは京介さんにとって本来気分のいいことではないはずだ。 それでも桐乃さんの対戦相手として力になってあげるために彼はこのゲームをやりこんでいるのだろう。あるいは。 (瑠璃さんや、わたしのためでもあるのかもしれない――いや、わたしのためであってほしい? わ、わたしは何を……) 頭の中に漠然と生まれた妄想を真っ赤になって打ち消していると、京介さんから返信が返って来ていた。 『そういえばさ、沙織』 「なんでござるか?@ω@」 画面を介した通信だったことが幸いして平静を装うことは用意だった。 『明日の休み、暇だったらちょっと付き合ってくれないか?』 (――――ッッ!?!?) そんな装った平静を吹き飛ばすようなナパーム弾が投下されてきた。 「ど、ど、どういうことですかっ!?」 『いや、ちょっと買い物にだがな……ってそんなに驚かんでも^^;』 ああ、買い物に……と少し落ち着いたものの、いまだ動揺は隠せていない。とりあえずは情報を集めなくては。 「どこへ何をしにでござるか?」 『いやな、最近勉強やらゲームのやりすぎか視力に若干不安が出てきてな。眼鏡でも買おうかと思ったんだけど一人じゃと思ってさ。場所は決めてないけど眼鏡なら大体どこでも一緒だろ?』 「きりりん氏や黒猫氏も?」 『いや、桐乃はモデル業で少し遠出するらしくて、帰りは夕暮れぐらいになるらしい。黒猫は妹が風邪を引いてしまった(黒猫曰く”下界の瘴気にあてられた”らしいが)らしくてダメだってさ。 麻奈実でもいいんだが、あいつはそういうファッション系に疎いからな……沙織がいてくれれば俺としては自信がもてるんだけどな……ダメか?』 「拙者でよければ、もちろん付き合わせていただきますが」 そんなことを言われて断れるわたしではなかったし元より予定はなかったのだが、京介さんと2人っきりという状況が否応なく自分の鼓動と罪悪感を高めていく。 『そうか、そりゃよかった!場所はどうしよっかな……やっぱ俺が横浜まで行ったほうがいいかな?』 「いえ、お気遣いなくでござる。せっかくだから拙者が千葉まで伺いまするよ」 『沙織がそう言うのならありがたく承るけど。じゃあ後で何かおごるよ』 「ふふっ、楽しみにしてるでござる」 『わかった。それじゃあな ノシ』 「しからば ノシ」 京介さんのオフラインを確認してからわたしはひときわ大きな深呼吸をした。 「京介さんと……デート……」 高坂京介。わたしの最も信頼する男の人。 容姿は決して良いとは言えない。けど、身近な人――特に桐乃さん――に対する献身や努力、奔走をわたしはずっと見届けてきた。 わたしを心配するあまりに桐乃さんや瑠璃さんと一緒にこの家に駆けつけてくれたこともあった。……でも。 「京介さんを信頼しているのはわたしだけじゃない……」 それがとりわけ大きなふたりの友人に、まだ話したこともないあのひとの幼馴染の方。 後者はともかく、前者の京介さんへの感情が単なる信頼だけじゃないのは傍から見ていてもすぐに分かる。それを考えるだけでわたしの胸はちくりと痛んだ。 「わたしは……どうすればいいのかしら」 答えの出ない問いを宙に紡いだまま、わたしはゆるやかにベッドへと潜り込んだ。 朝早くに目が覚める、というか覚めてしまい、わたしはシャワーを浴びるとおもむろに着替えを始めた。 服装はいつものオタクルックに渦巻き眼鏡。結局のところ人見知りの激しいわたしはこの格好でいた方が余計な干渉がかからず楽なのだ。わかってくれる人だけわかってくれればそれでいい。 はやる気持ちを抑えつつ予定の時刻に余裕を持たせて千葉駅の待ち合わせ場所に着くと、すでに京介さんはやってきていた。 「待ちました?京介殿」 「いや、そんなことはないぞ。俺が誘った上に俺のほうが近いんだから早めにいなきゃおかしいだろ」 「それもそうでござるな」 「即答かよ!まあいいや、何か食べるか?昼前だけど」 「それじゃあ再開を祝してマックでも。当然京介殿のおごりでね」 「最初からそう言ってたけどな。まだ月は見えないから沙織のターンだな」 「お、拾ってくださるとはさすが京介殿」 「ははっ」 マックのセットを京介殿におごってもらったあと、一息ついてから本命の眼鏡ストアに向かった。 「着いたぞ。ここだ」 「ほうほう。さすが千葉の駅前、なかなかの品揃えでござるね」 「さて、沙織の出番だ。思う存分探してくれ。もちろん俺も自分で探すには探すけどな……」 あまり自分で探すのに気が乗らなそうな京介さん。以前のコスプレが酷評されたのがよほどトラウマになっているらしい。 「了解でござる。うーむ……京介殿の嗜好とかはありまする?それも判断材料に加えたいと思いまするが」 「そうだな……フレームがあった方がいいかな。眼鏡があるならあるなりのファッションてものを求めたほうがいいかと思うんでな」 「ふむぅ、京介殿もメガネフェチ故のこだわりが自分にもフィードバックされておるのですな」 「メガネフェチ言うな!そりゃ否定はしないけどよ!」 「はははは。では、こんなのはいかがです?」 そう言ってわたしは京介さんに陳列されていたもののひとつを渡した。 「これは……よくあるフレームだけど、赤か。ちょっと派手じゃないか?」 「顔が肌色だから案外目立たないものでござるよ。意外と悪くないと思いますが」 「そういうもんかねえ?まあいいや、かけてみるよ……これでどうだ?」 京介さんが赤い眼鏡をかけて私を見据えてくる。その表情の真剣さに不覚にもドキッとしてしまった。 「おお……思った以上に良いでござるな……」 「へぇ?」 京介は存外な評価に感心して店に備え付けの鏡を見た。 「なるほど、悪くないな。さすが沙織だとほめてやりたいところだ」 「ありがたき幸せ。でもまだ最初のですからもっといいものがあるかもしれませぬ。只今一生懸命行方を調査しておりますのでもうしばらくお時間を」 「わかった。それじゃあしばらくは分かれて探そう」 そうしてわたしと京介さんは別々に散策を始めた。 京介さんの眼鏡をわたしだけが選べる、すなわち私色に染め上げられると思うと妙にときめくものを感じながらわたしは丹念に眼鏡を探していき、ある程度いくつかよさげな物を見繕ったあと京介さんと合流した。 後にして思うと、ここが運命の分岐点だったのかもしれない。 「だいたいこんなものでどうかと思いますが」 「なるほど。じゃあ俺が探したのと合わせて一つずつ試してみるか」 そうして京介さんの擬似ファッションショーが始まった。 ノンフレームのもの、ハーフフレームのものを加えて様々なデザイン、色を組み合わせて、まるで着せ替え人形のようだ、と少しおかしく思った。 「うーん……10個以上試したけど、やっぱり最初の赤のフレームが一番かな。これにしようか」 「そうでござるね。拙者も色々見繕いましたがそれが一番しっくりくる気がするでござる」 「じゃあこれで俺のは決まったな。……それじゃ、せっかくだから沙織のも新しく買ってみないか?」 「え?」 わたしはきょとんとして間の抜けた返事をしてしまった。少し期待していたとはいえ、京介さんがそんな大胆な提案をしてくるとは思っていなかったからだ。 「そうだな……じゃあ、まず試しに俺のと一緒のこれをかけてみるか?」 「は、はい……」 京介さんがかけていた買う予定の赤眼鏡を受け取ると、わたしは自分の渦巻き眼鏡を外しておずおずとかけてみた。 「ど、どうですか……?」 「おお、よく似合うじゃないか。さすが元が極上だから何でも似合うのかな。じゃあおそろいで買うか」 「あ、ありがとうございます……」 そう言うと京介さんはニッと笑いかけて、一緒にレジへと向かった。 そして清算を二人で済ませ、あらかじめ眼科の処方箋を受けていた京介さん用にレンズを調整してもらって製品を受け取り(わたしは伊達だったのでそのまま)、揃いの眼鏡をかけたまま店を出た。 と、その時。 「………?」 体が、熱い。 京介さんを見ているだけで動悸が激しくなるのが自分でも分かった。頭も良く回らないのを実感する。 京介さんとおそろいの眼鏡をかけている、その事実もまたわたしの興奮を助長するファクターになっていた。 「今日は付き合ってくれてありがとうな沙織――ってあれ?どうした沙織?」 「えっと、あの……なんでもありません……」 「なんでもないことないだろ、明らかに顔が赤いぞ。もしかして調子悪かったのか?」 こういう時ばかり鋭いのがこの人のずるい所だ。つい甘えたくなってしまうではないか。 「ええ……先程から、少し、気分が……」 「やっぱりそうなのか。じゃあ近いから俺の家に向かおう。多分桐乃のベッドが空いてるはずだからさ」 「え!?は、はい……」 もはやあまり考える余裕もないまま頷いてしまった。気こそ失わないものの、本当に熱でもあるかのような体の熱さだ。軽く体がふらつく。 「おい沙織!?……くっ……!」 京介さんは周りに人がいないのを確認してから軽く逡巡し、意を決したようにわたしをおぶって小走りに動き出した。 「きょ、京介さん!?」 「思ったより容態が悪いみたいだから四の五の言ってる場合じゃなさそうだ!もう1kmないからこのままおぶって行く!」 「で、でも拙者は重いんじゃ……」 「なせばなる!高坂京介は男の子ぉ!」 京介さんも恥ずかしいだろうにわたしの身の方を天秤にかけて決断してくれた。その思いに涙が出そうになった。が。 (……京介さんの臭いが……!) 走っているからであろう男くさい汗の臭い、それも京介さんのものであるということがわたしの思考を更に鈍らせた。なおかつおぶさっている関係上当然小刻みに体が揺れる。 そのことがわたしに起こっている変調をなんとなく理解させ始めていたが、そのままわたしは気を失った。 気がついたらわたしはどこかのベッドに寝かされていた。と思えば、このベッドにはどこか見覚えがあった。それもそのはず。周囲はいつも見慣れた風景が広がっていた。 「京介さんのベッド……!?」 その事実に直ちに思い当たると、起きる前までの衝動が直ちに沸き上がってきた。 京介さんの判断か買った眼鏡は外されて傍に置いてあったものの、疑惑を解消するためにわたしは再びその眼鏡をかけた。かけてしまった。 「……ぁっ!!や、やっぱり……!」 そう。この眼鏡はわたしの内なる感情――性的欲求を噴出させるためのパーツらしかった。 京介さんとおそろいの眼鏡。京介さんにおぶさってもらったこと。京介さんのベッドで寝ていること。 それら全ての要素が今まで溜め込んできた欲求不満を爆発させるように体に浸透してきていた。 思わず自分の胸、そして秘所へと手を差し伸ばしてしまう。 「んっ……!あ、はぁっ…・・・!」 ダメだ、こんなことをしていては、と頭は考えるも、体の、指の動きが止まってくれない。 もっともっとと性欲を掻き立てるように無意識のうちにわたしは服のボタン、ズボンのベルト、そしてブラジャーをも取り去ってしまった。 外気に晒された豊かな自身の胸とショーツの中を自分の意思など及ばないかのように指がまさぐる。 「んぁっ……京介さんに……さわられてる……ひぁっ!!」 もう沙織の乳首はピンと立ち上がり、秘部はグショグショに濡れていた。 「どうして、こんなに……あっ、ああっ!」 沙織は趣味の関係上18禁の同人誌などは数多く見ていたが、自分のを自分で触る、すなわち自慰は考えたこともなかった。それゆえに今の自分の淫乱な状態に同様を隠せなかった。 そして自らの指が乳首と剥かれた陰核をぎゅっとつまむと、増幅された性感はあっけなく絶頂をもたらした。 「ふぁっ、京介さ、んっ、あ、ああああああっ!!」 わたしの体は弓なりに仰け反り、ひときわ大きく痙攣した後にシーツをぐっしょりと濡らし、力なくへたり込んだ。 (こんなところ……京介さんに、見られたら……) 最悪の可能性を考えた瞬間、それは現実となった。 「どうした、沙織!……っ!?!?」 「ぁ……」 京介さんがお盆の上に雑炊とスポーツドリンクを乗せてドアを開け、そのままの状態で硬直した。 「そ、その……」 「い……いやああああっ!!」 羞恥が極限に達したわたしは、即座に胸を隠してベッドに潜り込んだ。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1257382677/864-867 今年のバレンタインは日曜日という事で沙織と黒猫が遊びに来た。 二人の女の子が家までチョコを届けに来てくれるなんて何て俺は幸せ者なんだろうな。 そういや、桐乃も昨日の晩に手作りチョコの制作に奮闘していたな、前日に麻奈実からもらった分も合わせると今年は4個も貰えるのか。 しばらく人生最多チョコ獲得記録更新の夢に浸っていると、桐乃と沙織がお互いと黒猫にチョコを配り始めて居た。 「て、おい俺の分は無いの?」 「はぁ、てかあんたそもそも何でここに居るの?あんたは呼んだ覚えないんだけど」 うわー、バレンタインなのに妹にここまで邪見にされるなんて……。 普通、バレインタインには「お兄ちゃんどうせ今年もチョコ0だったんでしょ、これあげるからありがたく食べなさいよ」的なイベントが起こるはずだろ!? 「京介氏、心の声がダダ漏れですぞ」 おっといけねぇ、エロゲのやり過ぎか……最近妹物エロゲばっかりやってるからすっかり洗脳されかけてたぜ。 「キモっ」 桐乃の目がいつも以上に冷たい。 「まあまあ、きりりん氏。意地悪もこのくらいにして置くでござる、本当は京介お兄様の分も用意してあるのでござろう?」 「え?そんなの無いけど?」 「うわっ、即答しやがった!」 今年は本当に貰えないのか……。 「そう言えば、黒猫は持って来てないのか?お前料理とか得意そうなのに」 「ええまあ、持ってきては居るのだけれど……」 いつも自信満々の黒猫にしては妙に歯切れが悪いな。 「何だ失敗でもしたのか。見かけが悪いくらい気にしないから持ってきたのなら出してくれよ、俺も黒猫のチョコ食べたいな」 「ほ、本当に見かけが悪くてもちゃんと食べてくれるのかしら?前言撤回は認めないわよ」 「ああ、もちろんだ。黒猫が愛情込めて作ったチョコが不味いわけないしな」 「ふ、ふん。私の手料理をまだ食べたことないくせに良く言えたものね」 そう言う黒猫は照れたのか少し顔が赤くなってるぞ。 「なら貴方に一番最初に食べる事を許可するわ、光栄に思う事ね」 そう言うと黒猫は持ってきたカバンから丁寧にラッピングされたチョコの箱を取り出す。 なんだ、ちゃんと用意してあるんじゃないか。さてと、中身の方はと……。 「うおっ!なんじゃこりゃ!?」 箱の中身の正体が咄嗟に判別出来ず、黒猫の意図を理解しようと顔を上げると黒猫の奴ニヤリとした嘲笑を浮かべてやがる。 「先程も言ったけれど、前言撤回は認めないわよ。さあ、じっくり味わいなさい」 引っ掛かったなと言わんばかりの見事な悪役面をしてやがる。 「いや、でもこれは……」 「何どうしたの?どんな不細工チョコだったの?」 「京介氏、食べる前に拙者にも是非拝ませて頂きたいでござる」 あまりの俺の狼狽ぶりに桐乃と沙織が興味津々という感じで俺の手元にあるチョコを覗き込みに来た。 「げっ!糞猫!あんたなんて物持って来てるのよ!!?」 「これは実に造形深い……」 俺たちは三者三様の感想を述べた 「失礼ね、れっきとしたチョコじゃない」 確かに立派な形をしているが、これは……どう見てもカブトムシだった。 しかも、足の形とか妙にリアルだぞ。これは素人に作れる様な代物じゃない魂篭ってる。 「あー、思い出したでござる。少し前にネットに話題になっていた昆虫グミというキットで作ったのでござるな」 「あら、バレてしまった様ね。この日の為に買っておいたのよ」 なんでも沙織が言うには、子供向けのおもちゃで昆虫そっくりのお菓子が作れるキットが売られているらしい。 詳しくは昆虫グミでぐぐってくれ。一応注意しておくが、虫がダメな奴とご飯時には開くなよ 「私は食べてないのだけれど、材料は普通のチョコよ安心しなさい」 「食べてないのかよ!」 つい反射で突っ込んじまったぜ。 いや、いくら材料がチョコだと分かっていてもこれを口に入れるのは躊躇する。 だが、形が悪くても食べると言ってしまった手前やっぱり無理でしたなんて口が裂けても言えない。 「ええい!どうにでもなれ!」 俺は目を瞑ってカブトムシの恐らく頭の方から齧り付いた。 角部分が舌に触れた時は悪寒がしたが……。 「ん?味は普通にチョコだな」 手に持ったカブトブシの胴体部分を見ると危うく吐き出しそうになるが、味はむしろ美味いと言って良い。 「うげー。あんたよくそんなの食べられるね」 桐乃が感心したというか呆れたというか汚らわしい物を見る目で、皆から5歩ほど離れた位置からそんな感想を漏らした。 「あら、貴方達の分もあるのだけれど、まさかデカ女のチョコは受け取ってこの私のは受け取らないなどど言い出さないわよね」 流石、黒猫黒い……。名前に黒が付いている事だけはある。 「そうですぞ、きりりん氏。我らは親友同士ではござらんか、せっかく黒猫氏が丹精込めて作った代物ですし受け取って差し上げましょう?」 沙織はガンプラ好きなだけあって虫にも耐性があるのか。 沙織の説得の甲斐もあって桐乃と沙織も黒猫のチョコを受け取った。 というか沙織はさっそく封を解き始めた。 「お、拙者のはカブトでは無くダンゴムシだったでござる。食べやすい手頃な大きさにしてくれるとは黒猫氏は気が利きますな」 型はカブトムシだけじゃなかったのかよ!こっちは足がいっぱいあったり丸まってるのまでありやがる。 「ふ、せっかくだから3人分別の形にしておいたのよ」 と言う事は桐乃のは何が入ってるんだ?と思って桐乃を見ると受け取った未開封の箱を見つめながら苦笑いをしていた。 「どうしたんだ開けないのか?」 3種類あると聞いては最後の一つが何なのか正直気になるので、包装を取ってやろうと手を伸ばすと。 「い、嫌!開けたくない!」 桐乃は受け取ったのは良いものの封を切るのにはまだ拒絶していた。 「きりりん氏、意外といけるでござるよこのチョコ」 沙織は既にダンゴムシチョコを食べ始めていた、よくこれを躊躇なく食えるな尊敬するわ。 とは言え、桐乃や黒猫みたいな変わり者だらけのコミュニティのリーダーを務めるにはそれくらいの器の広さが無いと駄目なのかもな。 「私達の仲は所詮そんな物だったのね。貴方は友達もそのチョコの様に開けずに捨てるんでしょう」 黒猫の言葉攻撃えげつねー。これは口論じゃ敵う気がしないな。 「なっ、そんなわけないじゃん。何さこんな箱の一つや二つ」 やっと開ける気になった桐乃の持つ箱の中身が御開帳されたー。 「ひぃっ!!」 箱を少しだけ開いて中を覗き込んだ桐乃が箱を放り投げた。が、丁度目の前に居た俺が慌ててキャッチした。 「何やってんだよ桐乃、食べ物は粗末にしちゃダメだぞ」 そう言って俺の手の内にある箱をせっかくだから開けてみた。 「うおっ!なんじゃこりゃ!?」 つい1回目のカブトムシと同じリアクションしちまったぜ。 「どれどれ、ほほーぅこれは中々」 と言って沙織も興味津々という顔で箱の中身を覗き込んだ。 問題の中身は芋虫だった。芋虫ていうかカブトムシの幼虫か? ホワイトチョコで出来てるのかクリーム色で、色と良い形と良い完全に本物と瓜二つだった。 頭の黒い部分と体下部の斑点が色分けされていたり三つの中で一番気合入ってる。 「もう開けたんだから良いでしょ、早くそれ仕舞ってよ」 桐乃はあんまりショックだったのかソファーの影まで逃げて頭だけ出してこっちを見ていた。 「他の二人は食べてくれたのに貴方は食べないのかしら薄情な人間ね、スイーツ(笑)の癖に」 最後のスイーツの癖にの部分の嘲笑は実にキマってた。こいつ役者やれるんじゃねーの? 「嫌!それだけは勘弁して!無理だからムリムリ」 桐乃はもう完全に涙目だった。だが、不覚にも桐乃のこんな顔も可愛いと思ってしまった。 だからなのか、悪戯心がくすぐられ芋虫チョコの箱を持ちながらこう口走っていた。 「沙織、桐乃を押さえろ。無理やり食べさせる」 「合点承知でござるよ、ニンニン」 沙織の奴も完全にノリノリである。 大柄な沙織の手により簡単に後ろから羽交い絞めにされてしまった桐乃はそれでも口を固く閉じイヤイヤの動作をする。 が、それが余計に俺のS心に火をつける。 「ハッハッハッ、観念するんだな。一度入れちまえば楽になるぜ」 我ながらすっかり悪役の台詞である。 「そうでござる、こんなに甘美な味わいは他にないでござるよ」 「お願いだからやめて!何でもするから!」 何でもと聞いて一瞬エロい妄想が広がりそうになったが、それを必死に振り払い一度開かれた桐乃の口をアゴを掴んでロックする。 「あがっふぐっ」 桐乃は口を無理やり開かされ、はじめてのはいしゃさんのドリルに泣き喚く子供の様な顔になっている。 「待ってろよ、今入れてやるからな。ほらしっかりお口で味わいな」 そう言って芋虫型チョコを桐乃の口に無理やり押し込む。 「ひぎぃぃ!」 叫んだ瞬間に口を閉じ芋虫が桐乃の口の中で踊る。 桐乃の顔は、すっかり涙でくしゃくしゃになっているが、虫だけに無視出来ない芋虫の味が口の中に広がる。 「うぅぅぅぅー!あぁぁぁあぁぁ……あへ?」 俺がアゴを抑えているので吐き出せない事を悟ったのか咀嚼し始めた桐乃の表情が点になる。 「どうした?どんな味がするんだ?」 「甘い……すっごい甘い」 「涙を流して喜んでくれる何て、私も作った甲斐があったわ」 と言いながら黒猫は吹き出しそうな顔をしていた。こいつのこんな顔初めて見たかもな。 たまにはこんな騒がしいバレンタインも悪くねえ、結局桐乃からはチョコ貰えなかったがな。 黒猫達が帰って夕飯時後に自室に戻るとノックの音がした。 なんだ?桐乃か?あいつがノックするなんて珍しいな。 と思ってドアを開けると泣き腫らした顔の桐乃が手を後ろに回して何故かもじもししていた。 「なんだ桐乃か、チョコ無理やり食べさせたのを怒ってんの?仕返しか!?」 「ち、違う!ち、チョコはチョコだけどッ!あの二人が居るときに渡すのは恥ずかしかったから……」 ん?なんだ俺にチョコくれるって言うのか?なんだ桐乃癖に妙な気使いやがって。 赤くなった顔と相まって妙に色っぽかった。 「はい!じゃ、もう寝るからおやすみ!」 そう言って半ば押し付ける様にチョコを俺に手渡し桐乃は背を向けた。 「おう、サンキューな」 俺が桐乃の背中に声をかけると、桐乃は振り向いてー。 「あと、次今日みたいな事したらあやせに言い付けるからね!」 親や警察じゃない所が可愛いが、その二つよりよっぽどあやせのが恐ろしい。 「ああ、もう嫌がるのを無理やりこじ開けてぶち込んだりしねーよ」 「ハァ?ちょっと言い方が変態っぽいんですけどー、やっぱりそのチョコ返して」 「やだよ、貰ったもんは俺のもんだ」 「ふん、勝手にすれば!」 そう言ってドアを思い切り閉めて、桐乃は自室に引き返して行った。 「ふう、それじゃあせっかく貰ったんだし開けてみるか」 そう思い箱を開けると。 「うおっ!桐乃の奴!」 手のひらサイズのハート型チョコの横に例の芋虫型のチョコが虫食いの様に横たわっていた。 ハート型のチョコの方だけを少し齧ってみると、ほど良い甘さとほろ苦さが心地良かった。
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1298520872/165-174 「ねえ、ちょっと訊いていい?」 「何だよ?」 「どうして、アタシはこんなところに居るワケ?」 いつも以上に不機嫌な様子で我が妹・桐乃様が問いかける。 それもそのはず。今、俺と桐乃は『田村屋』の店舗兼住宅二階の一室に居る。 早い話が、麻奈実の部屋に居るわけだ。 麻奈実のことを毛嫌いしているはずの桐乃がなぜ麻奈実の部屋に居るかって? それはな‥‥‥ 「麻奈実んところの店を手伝いに行くよ」 俺がお袋にそう言って田村屋の手伝いに出かけようとすると、 桐乃が俺の前に立ちはだかった。 「ふーん。また地味子のトコに行くワケ? ホントに手伝いなんてすんの?」 「なんだ、疑うのかよ? 店が書き入れ時とかで人手が欲しいんだってよ」 「そーんなコト言っちゃって、ホントはイチャつくつもりでしょ!」 「なに言ってんだ。そんなに疑うのなら、一緒に来て監視でもするか?」 迂闊だった。突き放すつもりで、つい好戦的な台詞を吐いちまった。 「そこまで言うなら、監視してあげてもいいケド?」 こういう実にくだらない流れで、俺と桐乃は田村屋まで来た訳だ。 要するに、桐乃は自分から麻奈実の家に来たってことなのだが、 そのくせ桐乃は、麻奈実の部屋に居ることが実に不本意そうな顔をしている。 いつものこととは言え、我が妹ながら我が侭が過ぎるぞ。 「ほんとうに久しぶりだねえ。桐乃ちゃんがうちに来るなんて」 麻奈実がお茶を入れながらニコニコした顔で話し始めた。 「ふたりともお茶と和菓子でいいかなぁ?」 「おう、ありがとうよ」 「アタシ、和菓子よりもケーキがいいな。それと紅茶にしてくんない?」 お前、よそ様の家でご馳走になるってのに、その態度は何だよ。 「あぁッ、ごめんなさいッ! ケーキと紅茶は無いの‥‥‥」 「チッ。つかえねえ!」 「お前、いい加減にしろよ! せっかく麻奈実が用意してくれたのに!!」 「別にィ、アタシが出してくれって頼んだワケじゃないし」 「てめ、このッ!!」 「やめて! きょうちゃん!! あたしがいけないんだから」 桐乃の理不尽な態度にもかかわらず、麻奈実は全部自分のせいだと言うんだな。 まったく、どんだけお人好しなんだよ。 いきなりそんなゴタゴタがあったものの、俺はなんとか田村屋の手伝いを終え、 俺たち三人は再び麻奈実の部屋で寛ぐことになった。 「ねえ、なんか面白いコト無いの?」 退屈を持て余した桐乃が不機嫌そうに言う。 「じゃあ、この前私が行った旅行の写真でも見る?」 「げ。地味なネタ!」 うーん。こればかりは桐乃に同意だな。 でもせっかく見せてくれるというのだから見てみますか。 「これが、親戚で集まって旅行に行ってきた時の写真なんだよお」 麻奈実は、プリントした写真を俺たちに見せた。 麻奈実の家族のほか、親戚の人たちだろう。結構な人数が写っていた。 その中にちょっと目を引く女性がひとり。 「お前の親戚にこんな若い女の人がいたのか?」 「ああ、ゆかりおばさん。最近会ってなかったんだけどね」 「叔母さん? 従姉妹じゃないのか? ずいぶん若そうだし」 「若く見えるよね? でも本当は(ピー)歳なんだよお」 「え!? (ピー)歳? ウソだろ!?」 「ウッソ、マジで!? これで(ピー)歳?」 「うん、(ピー)歳。でも自分じゃ『永遠の17歳』って言ってるけどね」 「ああ、そう‥‥‥なんだ」 俺と桐乃は二人でゆかりおばさんに驚いた。 世の中には人知を超えた領域ってものがあるんだな、と思ったよ。 「でも、桐乃ちゃんがこの部屋の来たのって何年振りかなあ?」 「よく覚えてないケド‥‥‥」 「桐乃ちゃんがうちに初めて来たときのことを覚えてる?」 「だから、覚えてないって言ってんでしょ!」 「初めて桐乃ちゃんがうちに来たときのことは、わたし、よおく覚えているよ」 また麻奈実の昔話か。 本当にこいつの昔の思い出話は俺の記憶に欠片すら残ってないんだよな。 今度はどんな話をしてくれるのやら‥‥‥ あー、桐乃のヤツ、クソつまらなそうな顔をしてやがる。 そして麻奈実は昔のことをひとつひとつ思い出すように話し始めた。 「桐乃ちゃんが初めてうちに来たとき、きょうちゃんと一緒だったんだよね。 そしてきょうちゃんってば、桐乃ちゃんのことをすっごく自慢していたよねえ。 かわいいとか、誰にも渡さないとか言っちゃって、聞いてて恥ずかしかったよ」 な‥‥‥なんだそれ? そんなノロケ紛いの妹自慢って俺的に黒歴史だろ!! そんなことを桐乃の前で言うなよ。俺、殺されるぞ。 恐る恐る桐乃の顔を見ると、顔を赤らめ、口をパクパクさせていた。 まるで酸欠状態の金魚みたいだ。そんな桐乃を意に介さず、麻奈実は続けた。 「でね、きょうちゃんを桐乃ちゃんにとられたような気持ちになっちゃって わたし、すっごく悔しかったの」 俺、オワタ。麻奈実、俺の骨は拾ってくれるよな? 「わたしにはお兄ちゃんがいないから、桐乃ちゃんのこと、羨ましかったなぁ」 「そんなに羨ましいのなら、代わってあげてもいいケド?」 酸欠金魚状態から復帰した桐乃が憎まれ口をたたきやがった。 「もう桐乃ちゃん。そんなこと言っちゃ、きょうちゃん、かわいそうでしょ! きょうちゃんは、桐乃ちゃんのことを今でも大事に思っているんだよ?」 「う‥‥‥」 珍しい瞬間だった。憎まれ口をたたく桐乃を麻奈実がたしなめるなんて。 しかも桐乃が珍しく、麻奈実に気圧されている。こんなこともあるんだな。 「また昔みたいに、きょうちゃんと桐乃ちゃんの仲が良くなるといいね」 昔みたいに‥‥‥か。それは難しい相談ですぜ、麻奈実氏。 「あ、お菓子をもっと持ってくるから、ちょっと待っててね」 オイ、こんな空気にしておきながら俺と桐乃を二人っきりにする気かよ? 「‥‥‥」 「‥‥‥」 どうすんだよ、この空気。 「「あのさ、」」 言葉が被った。ここはひとつ、俺が主導権を取るとするか。 「なあ、麻奈実にああいう態度取り続けるのって疲れるんじゃねえか?」 「だってしょうがないじゃん。アタシ、地味子のことがアレだし‥‥‥」 「なんつーか、もうちょっとカドの立たない態度を取るとかあるだろ」 「でも、どうすりゃいいのよ?」 「麻奈実と仲良くしろ、ってのは無理か?」 「無理!」 即答ktkr。コイツ、どんだけ麻奈実のことを嫌ってんだよ。 「じゃあさ、麻奈実の言う『昔みたいに俺と仲良く』ってのも無理か?」 「ナニそれ? このアタシにアンタと仲良くしろっての? うげえ、キモぉ」 我ながら、無茶な提案だったと思う。桐乃の反応も当然だろう。 「麻奈実は俺たちのことを心配しているんだぞ。心配かけさせるのもアレだから、 せめて仲良くするフリだけでも‥‥‥」 「なんでアタシが地味子のために気を遣う必要があんの? バカじゃん!?」 「麻奈実のためじゃねえ! 俺のために気を遣ってくれないか?」 「アンタ‥‥‥自分でナニ言ってるかわかってんの?」 わかっている‥‥‥つもりだ。 「つまり、アタシにウソを吐けって言うの?」 「‥‥‥そうだ」 「そこまで言うのなら、アタシに何か見返りあるんでしょうね?」 「わかった。何でも言うこと聞くよ」 「ウソじゃないでしょうね? 絶対だかんね!」 「おまたせしました」 麻奈実がお菓子を持ってきた。 俺が桐乃に目配せをすると、桐乃は意を決したかのように話し始めた。 「あ、あのさ、ま、まなちゃん‥‥‥」 「ふええぇぇっ!? 『まなちゃん』!?」 桐乃のヤツ、そこから入るのかよ! 麻奈実がひどく驚くのも当然だ。 「アタシ、あ、兄貴とケンカばかりしていたけど、 これからはもう少し仲良くしよう‥‥‥と思ってんの」 「ほんとう? 桐乃ちゃん」 「む、昔みたいに、兄貴と仲良く‥‥‥できたらいいなって思ったり。 それに本当はアタシ、兄貴のことを」 「そうなんだあ。桐乃ちゃん。昔みたいにきょうちゃんと仲良くしてね」 「うん‥‥‥、仲良く‥‥‥するよ、まなちゃん」 「きょうちゃん、桐乃ちゃんとこれからも仲良くしてね」 「ああ、任せておけ!」 ガチガチで違和感ありまくりだった桐乃のウソ。まあこんなもんか。 それにしても、麻奈実が遮ったせいでわからなかったが、 『本当は俺のこと』って桐乃は何を言いたかったのだろう? おっと、これは「ウソ」だったよな。 チッ、ウソの意味を読み取ろうなんてバカなことを考えたもんだな、俺。 「邪魔したな」 「ううん、邪魔だなんて。お店を手伝ってくれてありがとう、きょうちゃん」 「アタシ、先に行ってるから」 桐乃はそう言うと、さっさと外に出て行った。 「麻奈実。今日はありがとうな。お前の昔話、桐乃に効いたみたいだぞ」 「‥‥‥」 「どうした、麻奈実?」 「きょうちゃん、あのね‥‥‥」 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 俺が田村屋の外に出ると、待ち構えていた桐乃と出くわした。 「ナニやってたの? イチャイチャしてキモッ」 俺は桐乃と並んで我が家に向けて歩き始めた。 「しかし地味子って昔話が好きなんだね。全然覚えてないことばっかり」 「‥‥‥」 「アンタもアンタよ。あたしにウソなんか吐かせちゃってさ」 「‥‥‥」 「約束通り、アタシの言うことを聞いてもらうからね」 「‥‥‥」 「ちょっと、聞いてんの!?」 「桐乃―――」 俺はそう言うと、桐乃の右肩に右手をかけて桐乃を抱き寄せた。 「ちょ、ナニすんのよ!?」 「オマエ、ウソを吐いたのが気に入らないのなら、あのウソをホントにしようぜ」 「ナニ言ってんの?」 「つまり、オマエが言った通り、俺たち仲良くしようってこった」 「ハァ? ワケわかんない。つーか、キモいから馴れ馴れしくすんな!」 俺は、さっきの麻奈実の告白を思い出していた。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「きょうちゃん、あのね‥‥‥、さっきの話はうそだったの」 「え?」 「きょうちゃんが桐乃ちゃんのことをすっごく自慢してたとか、 かわいいとか誰にも渡さないとか言ったってこと、うそなの」 「どういうことだ? 俺、自分の記憶にないだけだと思ってたぞ!?」 「だって、今の桐乃ちゃんってきょうちゃんとよくケンカしているでしょ? だからぁ、きょうちゃんは本当は桐乃ちゃんのことを昔から大事に思って いるって桐乃ちゃんに思ってもらいたくてうそを吐いたの」 「お前、ウソは嫌いっていつも言っているだろ? それなのにウソを?」 そんな問いかけに麻奈実は微笑みながらこう返してきた。 「きょうちゃんと桐乃ちゃんが仲良くなるなら、わたし、うそだってつくよ?」 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「ちょっと、キモイから放せっつってんの!!」 「ダメだ!」 「つーか、いきなりどうしちゃったのよ!?」 「うるさい! グスッ」 「ア、アンタ、泣いてんの?」 俺は泣いていた。 俺と桐乃の仲を取り持つために麻奈実にウソを吐かせてしまったことに対して 自分自身が情けなかった。 「オマエだって、自分の吐いたウソ、無駄にしたくないだろ?」 「よく意味がわからないケド、アンタが泣くほどなんだからよっぽどなのね」 「ああそうだ。よっぽどなことがあったんだよ!」 「そう‥‥‥なんだ」 「だから今日だけ、いやせめて家に着くまでは仲良くしてくれないか?」 「ん‥‥‥、わかった‥‥‥」 「ありがとよ」 「勘違いしないでよね!! これはさっきの約束を守ってもらってるダケだし」 「約束?」 「そう。『何でも言うこと聞く』ってアレ」 ああ、そうだったな。そんな約束をしていたな。 「だからあ、アタシの言うことを聞いてよね!」 「ああ、何でも言ってくれよ」 「アンタと腕を組んで‥‥‥いいかな? ってコレは命令! 拒否権無いから」 「ああ、もちろんだ」 桐乃は少し赤くなった顔にわずかな笑みを浮かべて、俺の右腕に両手を絡めた。 「おい、ちょっと腕、絞めすぎ」 「ナニ? 何か文句あんの?」 「無いよ」 ちょっと歪だけど、これで俺たち『仲良く』なれただろうか。 形はどうあれ、お前のウソは無駄にしないぞ、麻奈実。 俺が桐乃の肩を強く抱き寄せると、桐乃は俺の肩に頭を預けてきた。 すっかり暗くなった帰り道、俺たちを家まで導くように月明かりが輝いていた。 『そのウソ、ホント』 【了】
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1294505746/313-316 「はぁはぁ…」 俺はホームルームが終了すると一目散に教室を飛び出す。そして靴を履き代えると、裏の通用口を使い学校を無事脱出した。それでも不安は拭えず、俺はしばらく走り続けた。 「ふぅ…、ここまで来れば安全だろう」 ようやく歩調を緩める。それでも恐怖心がそうさせるのか、つい後ろを振り返ってしまう。 「あら、京介君じゃない」 慌てて前を見ると目の前に立っていたのはフェイトさんだった。俺は安堵の溜め息をついた。 「脅かさないで下さいよ…、あやせかと思った…」 「あら、あやせちゃんがどうかしたの?」 「いや実は……」 俺はフェイトさんに返答しかけて、ふと気付いた。あれ、あやせとフェイトさんて面識あったか?そんな事を考えていると、フェイトさんが近寄ってきた。そして右手に握っていた物を、俺の首筋に当てるとこう言った。 「ゴメンね京介君」 次の瞬間、俺は目の裏から激しい火花が飛び散るような衝撃を受け意識を失った………… 目覚めは最悪だった。まだ目の裏がチカチカしているようで頭もクラクラしている。 「あら、目が覚めた?」 反射的に声のする方を見ると、頑丈そうなドアの脇に置かれた椅子にフェイトさんが腰掛けていた。 「フェイトさん!?これは一体……」 フェイトさんに詰め寄ろうとした俺は、身体が動かない事に驚いた。改めて確認すると、俺の身体は椅子に座らされた状態で拘束されていた。腕はひじ掛けに、足は椅子の足に、おまけに椅子自体がL字型の金具で床に固定されていた。 「ちょ…何の冗談ですか!早くこれを外して下さい!」 「申し訳ないけど、ある人の頼みでそれはできないの」 ある人?………何故だか急に身体震えてきた。生物としての本能が危険信号を発しているかのようだ。 そしてそれが間違っていなかった事はすぐに証明された。 ガチャリ……ギギギ……… 見た目に違わず、目の前のドアが重そうに開き、そこに立っていたのは―― 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 こんなに絶叫したのは小学生の時、初めてスプラッタ映画を見た時依頼の事だった。身動きが取れないのは先刻承知のはずなのに身体は本能に突き動かされ、この場から逃げようと手足を空しくバタつかせる。 「む、女の子の顔を見て悲鳴を上げるとか失礼ですね、お兄さん」 そう言って新垣あやせは頬を膨らませた。 少し前までの俺なら「膨れっ面でも可愛いな~さすがマイエンジェル♪」等と呑気な事を考えていたであろうが、いまやその存在自体が恐怖の対象でしかなかった。 「あの~あやせちゃん…お取り込みの所悪いんだけど…」 恐る恐るといった様子でフェイトさんがあやせに声を掛ける。あやせはちらりとフェイトさんを見ると「あぁ」と一言呟き、上着のポケットから一通の茶封筒を取り出した。 「お兄さんの捕獲、ご苦労様でした。約束のものです」 茶封筒を受け取るとフェイトさんは中身を確認した。そして 「ありがとうあやせちゃん!これで今月ガスと電気停められずにすむわ♪」 などと吐かしやがった!詳しい金額は分からないが、普通両方合わせても一万もいかない金額で俺売られたの!?激しくショックを受ける俺を余所に茶封筒を上着の内ポケットにしまい、部屋を出ていこうとするフェイトさんにあやせが声を掛ける。 「ああ、念のため言っておきますが……」 「わかっているわ、ここの事は誰にも喋らない。私もここの事は忘れる…でしょう?」 「そういう事です」 「じゃあ私はこれで……、京介君、申し訳ないとは思うけど…私にも生活があるの。ゴメンね」 そう言い残すと、フェイトさんは部屋を出ていった。そして頑丈そうなドアが重たげに閉じ、後には俺とあやせが取り残された。 「ようやく二人っきりになれましたねお兄さん?」 「ひひひ久しぶりだなあやせ」 裏返りそうな声を必死に押さえながら俺は返答する。するとあやせはまた不機嫌な顔つきになった。 「お兄さんがあってくれなかったからじゃないですか。携帯は着拒にするし、学校の前で待っていても裏口や塀を乗り越えて逃げてたじゃないですか!」 そりゃ会ったら何されるか分からないからな。事実今の俺が置かれてる状態が、考えが間違っていなかった事を証明している。 「私あの後、妊娠検査キットを使い自分で調べたんです。結果は……残念ながら陰性でした」 俺にとっては喜ばしい事だ。 「ですから、今度こそ確実に種付けをしてもらいますよ?私が確実に妊娠したら解放してあげます」 「ま、待てあやせ!やはりこういうのはよくないって!好きでもない男女で子供を作るとか…」 「私だって好きでするわけじゃありません。けどお兄さんは無意識にあちこちでフラグ立て過ぎなんです。このままではいずれ母親の違うお兄さんの子供が大量生産されてしまうでしょう」 ……………待ってくれ…、脳の処理が追い付かない。腕が自由なら頭を抱えているところだ。 「そうならないために、私が犠牲になり既成事実を作ろうと言ってるんです。ああ念のため私が無事出産したらパイプカットもしますよ」 あまりにも狂った発言に、俺は本能的に内股になりリヴァイアサンを少しでもあやせから遠ざけようとした。 「さぁ、おしゃべりはこれくらいにしてそろそろ……」 そう言ってあやせが近づいてくる。それにつれ、俺の身体はガタガタと震え出す。 「お兄さん、そんなに震えて寒いんですか?でも大丈夫、すぐに暖かくしてあげますからね…ウフフフフ…」 制服の上着を脱ぎながら、さらにあやせが近寄ってくる。俺は「あぅ…あ……あ…」等と意味を成さない呻き声を上げ震えるしかなかった。その時 バーン!…ズズーンッ あの頑丈なドアが内向き倒され、二つの人影が飛び込んできた。それは大門軍団……ではなく桐乃と黒猫だった。 「そこまでよあやせ!」「この悪魔!先輩を離しなさい!」 「くっ!何故ここが!?」 「フェイトさんから聞いたのよ!」「溜まっている水道代とケータイ料金を肩代わりすると言ったらすぐに教えてくれたわ」 「く…こんな事なら謝礼にもう少し色を付けておくべきでした…」 フェイトさん……あんたどれだけ困窮してんだよ……。まさか家賃も滞納してんじゃ? そんな事を考えていると、いつの間にか既視感のあるキャットファイトが目前で展開されていた。あれ?…って事はそろそろ…。そう考えた時、案の定腕のロープが緩められた。 「来てくれたのかブリジット!」 「あたしで悪かったな…」 「か、加奈子!?」 意外にも、そこにいたのは不機嫌そうな顔をした加奈子だった。 「どうしてお前が…?」 「加奈子もオメーを助けに出張るのは面倒だったんだけどよ…ブリジットにどうしてもって頼まれたから仕方なく来たんだよ」 ※※※※※※※※※※※※※※※ ブリジットの部屋 ぐるぐる巻きにされ口には粘着テープを貼られたブリジットが転がってる 「むぐむぐぅ~、もが~!(かなかなちゃんのバカ~!)」 ※※※※※※※※※※※※※※※ 「ほれ、とっととズラかろうぜ」 「あ、ああ…助かったぜ」 「礼はキッチリしてもらうからな」 「おう、ケーキでも飯でもなんでも奢ってやる」 「そんなもんより、もっといいもんご馳走してもらうぜ?」 何故だろう。今すごく危険な気配を感じた…。いや気のせいだな。 だから加奈子がペロりと唇を舐めながら、俺の股間にねっとりとした視線を這わせたのも気のせいに違いない… そう自分を信じ込ませると、俺は加奈子とこの悪夢のような部屋から脱出した 終り
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840 :◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/05/02(月) 22 29 58.30 ID D+xw36Tuo 俺は玄関先で靴の底の泥をよく落とし、服に付いた埃を軽く払ってから ドアのレバーハンドルに手を掛けた。 泥なんか付けたまま家に入ると、妹のヤツに怒られちまうんだよ。 玄関の上がり口に腰を下ろし、俺が靴紐を解いていると、その音を聞きつけたのか 妹が早速リビングから出てきた。 「お帰りなさい、お兄さん。……で、今日はどうでしたか?」 「うーん、今日はそれほどの収穫はなかったよ。 何かの昆虫らしい化石がいくつか見つかっただけさ。 俺は専門家じゃねえから、そのへんはよく分からんけどな。 それにしても、今日は疲れた~」 何で俺が化石の発掘なんかしてるかって……別に趣味でやってるわけじゃねえよ。 俺の親友の赤城ってヤツが、サッカー部の他に、最近になって遺跡発掘研究会とかいう わけの分からん同好会に入ったもんだから、俺も仕方なく付き合ってるだけさ。 そもそも遺跡の発掘と昆虫の化石の発掘って、違う分野なんじゃねえのか? 俺の見たところ赤城のヤツ、どうやらその同好会に気になる女の子がいるらしい。 赤城は極度のシスコンで、妹の瀬菜にしか興味がねえのかと思ってたけど、 どういう風の吹き回しなのかね。まぁ、俺には関係ねえけどさ。 「お兄さん、お風呂なら沸かしてありますけど…… お腹が空いているようでしたら、先にご飯にしますか? それとも……わ・た・し?」 いつものことだよ。あやせのヤツ、兄貴をからかうのがそんなに面白いのかね。 まだ中三のくせに、わざとらしく腰をくねらせやがって。 だがなぁ、俺だって健全な男子高校生なんだよ。 妹にからかわれていると分かっていながら、ついむきになっちまう。 「おまえはなぁ、なんつーカッコしてんだ、そのミニスカートは何とかなんねーのかよ。 家の中だってのに……短過ぎるだろうが。 おまえ、ジャージ持ってんだろ? 家の中じゃあジャージ穿いてろよ」 それじゃあパンツが見えそうじゃねえか。 俺だって本音を言えば、あやせがミニスカートを穿いてくれんのは嬉しいけどさ、 やっぱ、実の兄貴としては、そんなこと口が裂けても言えねえだろ。 「わたし、家の中だからこんなに短いの穿いているんですけど…… 外ではここまで短いスカートは穿きません。それでもだめですか?」 あやせはミニスカートの裾をちょっとだけ摘まみながら、不満そうな顔つきで俺を睨みつけた。 俺がどういう反応を示すかと、試そうとしている目つきだ。 そんな手に俺が易々と乗るわけはねえだろ。 それにしても、外では穿かないって……どういうことだ? まさかあやせのヤツ、実の兄貴の俺を挑発してるんじゃねえだろうな。 どんだけ俺が普段から妹に、つーかあやせに欲情しそうになるのを抑えていることか。 もしもあやせが実の妹じゃなけりゃ、今頃はあんなことやこんなことや…… 「ま、まぁ……ジャージってのは極端かもしれねえけどさ、 あやせだってもう中三なんだからよう、サザエさんに出てくるワカメちゃんじゃねえんだから、 パンツ見せながら家ん中を歩くなって言いたかっただけさ」 「…………お兄さん、わたしのパンツ見たんですか? この変態っ!」 そんなわけで、つい口が滑っちまった俺はあやせからローキックを食らって床に転がり、 あらためてローアングルであやせのパンツを拝んだ後、ほうほうの体で風呂場へと逃げ込んだ。 俺は風呂場の脱衣所の戸を勢いよく閉めながら、思いっきりあやせに言ってやったよ。 「あやせっ! 俺が風呂に入ってる間、絶対に覗くんじゃねーぞっ。 もし覗いたら……俺、泣いちまうからなっ!」 あやせは何も言ってはこなかった。 耳を澄ましてみても、廊下は静まり返っていて人が近づいてくる気配はねえ。 幾らあやせだって、実の兄貴の裸を覗き見る趣味はねえだろうしな。 もしかすっと、パンツの一件で、怒って自分の部屋に行っちまったのかもしれん。 そういやさっき、ドカドカと階段を上る音が聞こえてたもんな。 俺は風呂場の脱衣所の戸をそっと開け、あらためて廊下に誰もいないことを確認してから、 安心してゆっくりと服を脱ぎ始めた。 まぁ考えてみれば、あやせのヤツは俺が外から汚れて帰ってくるだろうと気遣って、 あらかじめ風呂を沸かして置いてくれたんだろう。 さっきは少し言い過ぎちまったかもしれん。仕方ねえ、風呂を出たら謝んなきゃな。 すぐにでも湯船に飛び込みたいところだが、そうするとお湯が汚れちまうと いつもあやせが口を酸っぱくして言うもんだから、俺はそれに従って丁寧に身体を洗うと、 ようやく湯船に身体を沈めた。 「やっぱ、妹はいいよなぁ~。……弟じゃあ、ここまではしてくんねえだろうしな。 あやせを産んでくれたお袋には、感謝しなくちゃいけねえよな」 「お兄さん、感謝するのなら、わたしに感謝してくださいね。お風呂を沸かして置いたのも、 こうしてバスタオルと下着を持ってきてあげたのも、全部わたしなんですから」 心臓が止まるかと思っちまったよ。 俺が慌てて風呂場のガラス戸に眼を向けると、その型板ガラスの向こう側には バスタオルらしきものを手に持って仁王立ちをしている、あやせのシルエットが映っていた。 そういや俺、着替えも何も持たずに風呂に入っちまったんだっけ。 どんだけあやせってヤツは、気が回るヤツなんだかね。 「これで風呂場のガラス戸がガチャっと開いて、お兄さんお背中を流しましょう――」 「お兄さんっ! 心の声がダダ漏れじゃないですかっ。 ……本当に開けちゃいますよっ」 「あやせっ、それだけは勘弁してくれ。俺にも心の準備っつーモンがあんから」 「もう、冗談はそれくらいにしてください。着替えは、ここに置いておきますから」 あやせの気遣いに感謝しつつ、俺は風呂場にも鍵を付けるって考えたヤツにも感謝した。 だって、あやせが脱衣所を立ち去る際に、小さく舌打ちするのを聞いちまったんだもん。 俺は風呂場の外の気配に全神経を集中させ、音を立てないように風呂から上がると、 あやせが用意してくれたパンツを速攻で穿いた。 俺がパンツ、といってもトランクスとTシャツというラフ過ぎる格好でリビングへ行くと、 あやせが冷蔵庫から麦茶を出してグラスへ注いでくれた。 もうさっきのことは怒っていないようで、あやせはいつもの笑顔だった。 俺の妹にして置くのは勿体ねえなと思いつつも、やっぱ妹で良かったんだとも思ったよ。 だってそうだろ、妹じゃなかったら、こうしていつも一緒にいられねえじゃねえか。 俺が麦茶を飲み干すのを待っていたかのように、リビングのソファーに座っていたあやせが おもむろに声を掛けてきた。 「お兄さん、来週のお兄さんの誕生日のことなんですけど……」 「俺の誕生日っていうことは、あやせの誕生日でもあるわけだろ。 ……で、それがどうかしたのか? 今年は二人とも受験生だから、プレゼントはお互いに自粛しようってことだったけど」 何を隠そう、俺と妹のあやせは、歳は三つ違いだけど誕生日は偶然にも同じなんだ。 兄妹で誕生日が同じなんて、めずらしいことかも知れねえけどな。 俺たちがガキの頃、お袋なんか、ケーキを買うのが一回で済むって喜んでいたけど。 あやせが中学生になると、家族で誕生日を祝うこともなくなっちまった。 俺はあやせが可哀想になっちまって、それ以来は兄妹だけで誕生日祝いをするようになった。 あやせはガキの頃から、何かってーと俺にまとわり付いてきた。 俺もあやせの世話を焼くのはイヤじゃねえし、むしろ率先してやってきたつもりだ。 そんな俺たちを見て、『おまえら兄妹じゃなくて、本当は恋人同士なんじゃねえのか』なんて、 口の悪い友人の赤城によくからかわれたもんさ。 以前は赤城からそう言われて、俺も少し変なのかと真剣に悩んだ時期もあるけど、 あやせのような可愛い妹を持っちまった兄貴なら、誰だってこうなるさ。 そう言ってる赤城だって、てめえの妹の瀬菜にベッタリじゃねえか。 お互い様ってもんだよ。 「ええ、ですからわたし、お互いにお金を掛けなくてもいいプレゼントを考えたんです。 品物はわたしがあらかじめ用意しましたから、 お兄さんには、それにサインをして頂くだけでいいんです」 俺もさぁ、超短いミニスカートでソファーに座っているあやせを前にして、 この格好のままリビングの椅子に腰を下ろす勇気は持ち合わせちゃいねえんだ。 取りあえず、あやせにはこのまま待ってもらうことにして、俺は部屋に着替えを取りに戻った。 それにしても、あやせが用意したプレゼントって何だ? 俺がスウェットのズボンを穿いてリビングへ戻ると、気付いたあやせが後ろ手に何かを隠した。 俺の動きを眼で追いながら、何やら悪戯っぽい笑顔で俺を見ていやがる。 たぶん後ろ手に隠したモンが、さっきあやせが言っていたプレゼントなんだろう。 金は掛けねえし、俺はサインをするだけだっつーから、大したもんじゃねえんだろうけど。 俺の妹は、たまに兄貴の俺が想像もしねえようなことを思い付きやがるからな。 サインだけだって言われても、用心するに越したことはねえ。 「――で、俺は何にサインをすりゃあいいんだ?」 「これにお願いします。……下の方に、サインをするところがあるでしょ」 あやせが俺にサインをしろと差し出したものは、映画のチケットくらいの小さな紙片だった。 しかし、俺がサインをする部分以外はあやせが手で隠しているもんだから、 幾らなんでも俺だって気軽にサインをするわけにはいかねえ。 どう見ても映画のチケットなんかじゃねえし、よく見りゃ手作りのような気もする。 たぶん、あやせがパソコンで作ってプリントアウトしたモンなんだろう。 「どうしたんですか、お兄さん? サインをしないつもりですか?」 「いや、そうは言っても、これが何なのか分からんのにサインできねえだろ」 「お兄さんは、妹のわたしの言うことが聞けないんですか?」 俺はあやせの声のトーンが変わったことにビビリながら、そっと妹の顔を窺った。 あやせの顔からは笑顔が消え、その瞳からは光彩が消失していた。 このまま俺が押し黙っていれば、あやせの口から『ぶち殺しますよ』との台詞が飛び出すのも 時間の問題だろう。いや、俺の命の問題かもしれん。 「な、なぁ、あやせ……もしも俺がサインしなかったら、どうするつもりだ?」 「……お兄さんがサインをしないなんて、わたしは全く考えていませんけど。 もしそういうことになれば、“お兄さんが、わたしの下着を盗みました”って、 お母さんに言い付けるだけです」 「おまえなぁ、そんなウソをお袋が信じるとでも………………」 俺は、あやせの言う通りに黙ってサインをした。 一度サインをしちまった以上、あとは煮るなり焼くなり好きにしてくれっつーの。 何だかんだ言ったって、俺とあやせは昔からけっこう仲がいいんだよ。 時々、兄妹であることを忘れちまいそうになるのが怖いんだけど。 「それでは、お兄さんからサインももらいましたから、これはわたしが預かって置きます。 その代わりに、お兄さんには、誕生日プレゼントとしてこれを差し上げます」 あやせがそう言って差し出した物は、さっき俺がサインをした物と同じような紙片だった。 「……ふぁーすと・きすよやくけん? 何じゃこりゃ?」 つい棒読みしちまった。 手に取って良く見りゃ、その紙片には“ファースト・キス予約券”って書いてあった。 有効期限は無期限、そのうえ譲渡禁止って文言も明記されている。 つまり、あやせのファースト・キスを頂ける券ってことだよな。……そのまんまだけど。 あやせは少し顔を赤らめながら、ジッと俺を見つめている。 俺の妹は一体何を馬鹿なことを考えてんだよ、と思う前に、 すぐにこの券を引き換えようとしていた俺がいることに気が付いた。 しかし冷静になって考えてみれば、俺がこの券を持っている以上、 あやせがどこの馬の骨とも分からねえヤツに、ファースト・キスを奪われる危険性はなくなる。 そう考えれば、妹思いの兄貴としては安心この上ない。 ところで気になることがひとつだけあった。 さっき俺が無理やりサインをさせられたモンも、これと同じような予約券の類なんだろう。 兄妹でお互いに“ファースト・キス予約券”を持っていたって、意味ねえもんな。 「なぁ、さっき俺がサインしたヤツも、何かの予約券なんだろ? ……やっぱ、気になるんだよ。あやせが俺に“ファースト・キス予約券”をくれたんなら、 俺はおまえに、何の“予約”をやったことになるんだ?」 あやせが俺に見せたその“予約券”にも、有効期限は無期限、譲渡禁止って文言が明記されていた。 だが、俺のもらった“ファースト・キス予約券”とは明らかに違う点が、ひとつだけある。 それは、あやせが手に持っている“予約券”には、予約券という文字の左側に入るべき名称が、 今はまだ空白になっていることだった。 (完)
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1316537661/768-777 「沙織ってござるござる言ってた割に忍者のコスプレしたことないよな」 「ほえ?」 何の気なしにつぶやいた俺の発言がきっかけだった。 「いや、今でこそあの眼鏡ほとんど使ってないけどさ。ああいう口調だったからそういえばくの一にでもなったことあるのかなっと」 とはいえ、『~氏』とか考えるに別に特定の何かってわけでもなかったのだろうが。 「あれは彼方さんの『コスプレ』とでも言うべきものでしたからね。なるほど、考えてみればその発想は無かったですわ」 「しょっちゅうニンニンとか言ってた気もするが」 「そういえばそんなこともあったでござるなぁ~ふふっ」 「おい」 口をωにして顔をほころばせる沙織に軽くチョップで小突きを入れ、沙織はてへっと舌をちろりと出す。 死ぬほどあざといが、加奈子の次ぐらいには似合うから困る。いや、麻奈実とタイぐらいか? そんなことを居間のソファに体を預けながら考えていたところ、 「……また他の女の子のこと考えてました?」 「別に?」 こういうことには意外なほど鼻が鋭い奴だったりするのがこの沙織である。 なぁにぃ聞こえんなぁとばかりに目を上に泳がしてわざとらしくうそぶく。 「……新垣、あやせさんでしたっけ?」 「――ッ!?」 未知の角度からの追求に思わず背筋が凍った。 なんでそんなことを……と訊こうとしたが、それでは自白したようなものだと思いとどまる。 「『最近友達の――あやせって言うんだけどさァ――の様子がおかしいのよね。 そんで聞いてみたら”今度の休みにお兄さんと久しぶりに会うんだよ”って返ってきてさ。 あのバカに釘刺しておいた方がいいんじゃないの?』って匿名希望の方から投書を戴きまして」 ご丁寧に口調までトレースしてくれたおかげでバレバレである。 あ……あんのバカ妹がぁーッ!!と逆ギレしそうになったが、よく考えてみればこれに関してはあやせが軽率なだけで桐乃に罪はない。 ああそうさ、ばれなければ黙っておくつもりだったのは認めるよ。これに関しては完膚なきまでに俺が悪い。 って誰に言ってるんだろうか俺。 「別に京介さんが誰と会おうとわたしは止めませんよ?けども、彼女たるわたしには一言でも言伝してほしかったですね。 わたしの許可無く手を出していいのは桐乃さんと瑠璃ちゃんだけです」 あいつらならいいのかよ!と心の中で突っ込みながら、ばつの悪そうに俺は沙織を見た。 その悲しげな表情に、自責で思わず唇を噛んだ。 「いや、悪かった。ちょっと欲を出しちまった俺が本当に悪い。こんなできた彼女がいるってのにな」 「まったくですよ。 さて、話がまとまったようですし、コスプレでもしましょうか」 「えっ?」 「忍者のですよ。さっき言ってたじゃないですか」 そういえばそんなことも言ってたっけな……あまりの冷や汗にすっかり忘れてたぜ。 「忍者っつっても結構広い気がするが。ハットリ君のでもするのか?くの一はいなかったような……」 「ああ、それに関してはきちんとツテがあるので大丈夫です」 「ふぅん?すると俺は?」 「漆黒で構いませんよ。ちょっとした都合もあるので」 「うぅん、なんか面倒くs――」 にっこり。 「やらせていただきます」 「よろしい。それでは向こうで着替えてきてくださいな」 首を二度縦に振ってマンションの外に出る。 すっごいニコニコしながらキレるのがうちの娘の特徴でもある。というかやっぱあれ超恐ええよ! 「この格好をするのも何度目なのかな」 というほど多くもない気もするが。最初に素顔の沙織を見た時から指折り数えられるぐらいか? なんにせよ沙織に付き合わされて結構コスプレをしてきたが、これが俺に一番合っていると自分でも思うことはある。 沙織も『姉さんの旦那さんが元ネタ』だとか言ってたし、そのへん思い入れがあるんだろうかね。 用意の済んだ俺は元いた部屋の玄関に手をかけてノックをした。 「おーい、戻っていいかー」 「はーい」 許しを得た俺は取っ手を回してドアを開けると、沙織の意外な姿に心を奪われた。 くの一っちゃらしいんだが、黒を基調とした軽装で、沙織の豊満なボディが余すところなく表現されている。 ってかこれは…… 「……SO(ステラ・オーシャン)3のクレア?」 「ご名答!どうです?似合いますか?」 ふわっと一回転して腰を低く落とし、右手を閉じたチョキの形にして口元に寄せる。 元のキャラが貞淑で温和なグレーの長髪ということもあってか、はまりすぎて怖い位である。 「――いや、すっげえかわいい」 「ふふっ、お褒めに預かり光栄です。京介さんも良くお似合いですよ。さあさあ中へ」 「お、おう」 語彙力のない自分が恨めしいが、あげつらった言葉も変だと自己弁護してみる。 そうして忍者というか隠密に導かれて俺は部屋の中に入ったのだが―― 「……なにこれ?」 部屋の中には縄に鞭といった――いわゆる、そういう系のシロモノ?が並べられていた。 というか、こんなのが部屋のどこに隠されていたのかという疑問もあるが、 「隠密といえば捕縛、尋問じゃないですか。だから京介さん、お願いしますね」 「いや、その理屈はおかしい」 「わたしは夜魔の女王の放った斥候という設定でお願いします」 「人の話を聞け!」 そもそも漆黒はダークヒーローではあるがそんな趣味はないと思うんだが。 黒猫に聞かせれば「漆黒はそんなこと言わない」とか一蹴されそうである。 「大丈夫です、人は誰しも暗黒面を持ってるものですから。さあ!京介さん」 やけにノリノリで怖いぐらいの沙織さんがちょいちょいと手招きをしてくる。 そのやたら扇情的な仕草に思わず俺も劣情を煽られてきた。 「……なに、そんなに俺にやって欲しいの?」 「……京介さんじゃなきゃ頼みませんよこんなの。言わせないでください恥ずかしい」 「わ、わかった」 好いた女にそこまで言われたら据え膳ってレベルじゃあるまい。覚悟を決して俺は沙織を縛りにかかる。 ご丁寧に部屋周りには引っ掛ける用のフックみたいなものがついていた。 世の中には色々便利なものがあるもんだな……と変にしみじみと思いながら縄を結っていると、 「あ、そうそう京介さん」 「ん?」 「この衣装、別に破っても構わないんで。脱がしたいならそれでもいいですけど」 「……」 けろっとした顔で言い放ちやがる。 こいつ、たまに痴女の素質があるんじゃないかと疑わざるを得ない時があるんだよな。 嫌いかと言われればうん、大好きSA!と答えるところだが。 薄暗い部屋の中、両手両足を部屋の壁と縄で拘束された女が一人いた。 「ここは……?」 「ようやくお目覚めかね」 そこから姿を現したのは、黒いマント姿に身をうつした漆黒――つまり俺だった。 「女王の為に御苦労様、と労っておこうかな?」 「下種が……一思いに殺せ!」 「殊勝な心がけだが――その容姿、殺すには惜しいのでな」 「なん……だと?」 「要は、俺の女になれ、ということだ」 「ふざけるな!誰がそんな……」 「そうだ。その強気な態度。それが実にいい。 まあいい、俺の手でじっくりと俺の味を教えてやる」 我ながら歯の浮くような台詞だが、いわば小芝居のようなものなのだから気にしたら負けだ。 沙織もそのへんがわかっているからこそ余計なことは言わない。 彼女に下種とか言われると地味に傷ついたりもするんだが、まあいい。今はとにかく雑念を捨てることだった。 俺――漆黒は徐に彼女の首筋を掴み、強引に唇を奪った。 「――んッ!?」 「俺謹製の媚薬だ。割と即効性だぞ。さて、次は――」 力いっぱいに首元から忍装束を引き千切る。 見た目よりも割とやわい作りだった。そういう意図だったと内心苦笑せざるを得ないが―― その何度見ても飽きない大きな双球が外気に晒され、俺は生唾を飲み込んだ。 「普段の力さえ出せれば……貴様なんぞに……!」 「その縄も貴様等の力を削ぐように出来ているのでな。無駄なあがきはよすことだ」 「くっ……」 いかにも悔しそうな素振りで俺を睨み付ける。 なんかどこかで聞いたようなセリフだが、今は考えるのはよそう。 漆黒はこね回す様な動きで両手を胸へと動かし、乳首をきゅっと摘み取る。 時に強く、時に優しく。 「うっ……ああっ……」 「どうだ、愉しくなってきただろう?」 「だっ……誰が!」 「そうか。では、こちらも味わうとするか」 「あっ……」 残っていた衣装を股の下まで裂き取り、残っているのは白いショーツ一枚となった。 そこをショーツの上から丹念に舐め回す。 女の体が電撃を受けたようにビクンと跳ねた。 「ああっ……ひ、卑劣な……」 「お仕置きに汚いも何もあるまい。現にお前のここは悦んでいるぞ?」 「き……貴様の薬のせいだろうっ」 「ん?言っている意味がわからないな。あれはただの栄養剤だぞ」 「なっ……」 「お前は自分が快楽に溺れていると認めたのさ。それが真実だ」 「姑息な真似を……!」 「何か違いがあるのか?違わないさ、ははは」 残ったショーツも破り捨て、露になった秘所に人差し指を滑らかに差し入れる。 今だきつさを失わないそれはまさしく名器と呼ぶにふさわしいだろう。 そしてそれがある一点に到ったとき、 「んっ……くっ…あっ…あ…あああああっ!!」 体をバイブのように著しく痙攣させ、目の前の女はイき果てた。 あ、そういやバイブ使うの忘れてたな。まあいいや、俺ももう我慢できん。 ヒャア、がまんできねぇ0だ! 「ま……まだ……!」 「心までは屈さぬか……ますます気に入った。まあいい、夜はこれからだ。じっくりと可愛がってやろう。まず一発目を受け取るがいい」 「な、何を!」 漆黒は名も知らぬ女の腰を持ち上げて後ろ向きにさせると、むき出しにした性器をそこにあてがった。 「やっ……やめろッ!?」 「悪いが、それはできない相談だな」 あくまで余裕そうに、漆黒はずぶりと思い切り差し入れた。 「ぐっ……うううううっ!!」 「なんだ、非処女か。とんだ淫乱女だったのではないか、ははははっ!」 「そん、な、ことっ……あぁんっ!」 初めても戴いたんだが……と恍惚に一瞬浸るも、すぐに打ち消して一心不乱に腰を振る。 「ほうらっ、中に出すぞ!」 「っ!?や、やめろっ!それだけは!」 「ペットの言葉に耳を貸す奴がいるか?」 「ぺ、ペッ……あっ、うぁあっ!」 内心すまんとおためごかしをしながら、俺は欲望を素直に沙織の膣内に解き放った。 「んっ……ああ……あああああああ!!」 キューッと収縮した膣に一滴残らず搾り取られ、ズルリと自分のモノを抜く。床に倒れた沙織の蕩けた表情は抜いた後だというのに未だ魅力的だった。 もう腰がガクガクで正直立ってるのも辛かったが、漆黒としての矜持で直立し続けた。 「パーフェクトです、京介さん。惚れ直してしまいましたわ」 「感謝の極み」 うっとりとした沙織の表情に頑張った甲斐があったかな、と自分を讃えようとしていた矢先―― 「さて、第二幕の開始ですわね?京介さん?」 「えっ」 「だってまだあの『わたし』は堕ちてませんからね。物語はちゃんとやりきらないと」 「ちょっ――」 明日はあやせと待ち合わせがあるんだけど、 「京介さんに拒否権はありません」 にっこり。 ああ、そういえばこいつ知ってたんだっけか、そのこと…… もはや言葉は不要だった。 俺は黙って深く頷き、夜が更けても絞られ続けたのだった、マル。 次の日、俺がげっそりとした表情で遅刻までしてしまい、あやせに深く心配されたのは言うまでもなかったとさ。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288544881/876-879 もしも、京介が桐乃とぶつからなかったら 前編 三日ぶりの風呂を浴びるため、築30年の今に壁を伝う緑に破壊されそうなボロアパートへ帰る途中、 公園のベンチで横たわってうずくまる人影に目を取られた。 ダンボールを布団代わりにしていないので、すぐにホームレスではないことが知れた。 時刻は午後11時をまわり、季節柄、上着一枚で寝れば命にかかわるほど寒かったからだ。 帰宅途中同僚と飲んだ酒が一気に冷めていくのを感じた。 少しためらったが、ため息を吐いて諦めた。…仕方が無い。 疲れた体に鞭を打って、俺は公園に踏み込んだ。 「おーい、大丈夫か?……高校生?」 近づいて確認すると、なんと寝ていたのは女で、中学生か高校生らしき制服を着てた。 体つきは大分大人っぽいので、多分高校生だと思う。 背もたれのほうに体を向け、寒そうに縮こまっている。 短いスカートから伸びた脚が震えていないところを見ると、相当冷えているに違いない。 腰まで伸ばした茶髪がベンチからはみ出しだらしなく地面に垂れ下がって汚れていた。 「……なに?」 俺の問いかけにかなりの間を置いて、小生意気な声で女子高生(仮)が振り向きもせずに言う。 「こんな時間にどうした、家は?」 「…カンケーないし…ナンパ?」 なんだろう、たった一言二言交わしただけなのに、無性に腹が立つ。 仕事で生意気な高校生の相手することがたまにあるで、慣れたつもりではいたが…。 多分、この妙に幼い声色のせいだろう。それにロングの茶髪も気に入らない あと常に上から目線なのが言葉から透けて見えるあたりもだ。 「ちげーよ。つか家に帰るつもり無いなら警察呼ぶぞ」 女子高生(仮)は、カバッと勢いよく振り向いた。 ガラス細工のように整った顔立ちに、につかわしくない皺を眉間に刻みつけて俺に啖呵を切る。 「はぁ?あたしがなんかしたっての!?」 想像以上の容姿に一瞬だけ気負される俺。 なさけねぇなぁ…。こんな小娘に一瞬でドキッとするあたり実に情けない。 それにしてもこんな時間に男に話しかけられてここまで威勢よく切り返せるあたり、たいしたタマである。 滅茶苦茶イラッとくるけど。 だがこういういかにも場かなDQNは経験上、理詰めに弱い。 ふふふ、覚悟しやがれ。 俺は咳払いをして普段詰め込んでいる知識の一部を得意げに開放した。 「お前未成年だろうが、東京都の条例じゃ午後10時以降は…」 「うっさい!悲鳴上げて人を呼ぶわよ!?」 「!?」 な、何だと!? こ、こんな切り返しは初めてだった。 そういえば普段は必ず二人一組で行動しているし制服を着ているのでなんと言うことは無いのだが… 今は私服で悲鳴に人が集まってきては妙な誤解をされかねない。 「…て、てめぇ!」 餓鬼の相手なんてしてられない。 ポケットを探り携帯を取り出す。 「っちょ、ちょっと、なにしてんのよ?」 「警察に連絡してんだ。てめーとは話にならねぇ」 つか滅茶苦茶ムカつくからな。 こんな腹立たしい奴妹以来だぜ。 あー、イライラする。 こっちは久しぶりに仕事から解放されたばかりだってのになんだってこんな餓鬼のお守なんざ… そう思った瞬間、女子高生(仮)は俺の想像を超える行動に出た。 バチ! 「ってぇ、おい!」 「っふん!」 ――――バキィ!! え、ええええええ!? 嘘、マジで? 突然飛び掛って携帯を掠め取ったかと思ったら、その携帯…膝で圧し折りやがった!? いや、いやいや、ちょっとまて…え?なにこれ? 仕事を始めて一年、大分いろんな奴を見てきたつもりだったけど、 いくらなんでもここまでアクロバティックなやつには会ったことが無いよ? 女子高生(仮)は呆然と口を半開きにしているであろう情けない俺を睨みつけて言い放った。 「つかマジでウザい!あたしが何時何をしようが誰にも迷惑かけて無いじゃん!」 いや、俺の携帯… 「ほら、早くどっかいってよ、マジで大声出すよオッサン!」 最後の一言に、俺の堪忍袋の尾が切れた。 「誰がオッサンだゴルァ!」 「キャ!」 女子高生(仮)の両肩をつかみ、力任せにベンチに押し倒して座らせる。 「ちょ、なにすん…!」 ジャケットの内ポケットから取り出したカードケースを開いて突きつけた。 ふふん、これで少しはビビるだろう…。 「…高坂京介?い、いまさら自己紹介?やっぱりナンパ…」 「そこじゃねぇ!!警察手帳ってところに驚け!」 女子高生(仮)はぷい、と顔をそらした。 「はん!それであたしがビビるとか思ってんの?」 「これはな、逮捕する手順だ…器物破損の現行犯でしょっ引かれたくなかったら、 今すぐ名前と自宅の電話番号とここに居た理由を吐いて携帯電話を寄越せ」 「中身見る気!?」 「署に連絡すからに決まってんだろうが!」 この期に及んで何考えてんだこの餓鬼! むーと唇を結んで俺を睨む女子高生(仮) 俺は容赦無くボールペンを取り出し、質問を始めた。 「名前は?」 「こ……りの…」 「んあ?」 「あ、新垣リノ」 いやな響きの名前だ。 俺は続けた。 「家の伝は番号は?」 「……」 「ほら、どうした」 「…携帯に記録してあって、憶えてない。」 あからさまに嘘だった。 どうやらこういうやり取りは、案外苦手なようだ。 「じゃ携帯をよこせ」 「ない」 にべも無く言い放った。 どうにもこいつは人の苛立ち中枢を刺激するのが上手い。 「おまえさっき『中身見る気?』とか言ってたよな?」 「今は持ってない。家にある」 ほら、と立ち上がって上着をヒラヒラさせてみせる。 ついでにポケットも裏返す。糸くずと小銭がいくらか。 「家は何処だ?」 「千葉」 ジーザス…。 俺は署に帰った後の事務処理手続きの面倒さを想像して天を仰いだ。 あそこの少年課のオバちゃん苦手なんだよなぁ… 「何?」 「何でもねーよ。…で、なんでこんなところに居るんだ?」 聞くまでも無いが一応形式上、聞いた。 リノは今度はまっすぐ俺を見据えて妙にはっきりと言った。 「人探し」 「人?」 意外な答だった。 てっきりただの家出だと思っていたのだが 「…男を探してる」 あー…そういうことか。 「彼氏とかか?」 「…言いたくない」 それきり、むすっとして質問に答えようとしないリノに業を煮やした俺は、ひとまず自分の部屋に上げることにした。 そこで署に電話して引取りに来てもらおう。 「なにそれ、やっぱり変なこと…」 「調子に乗るな。…このまま外に居たら凍えるだろうが」 そういうと、リノは渋々俺の部屋に入った。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1281447547/492-495 世の中いろんな不幸があるが、中には珍しいのがあって「幸せな不幸」なるものが存在すると俺は思う。 例えば女の子との待ち合わせまであと10分ほど余裕があるのだが、その途中立ち寄った公園で野良猫にえらく懐かれ、膝の上に座った上にその場に落ち着いてしまいヘタレた空気椅子状態で 身動きが取れなくなってしまう、などがソレだ。(無論、この場合主人公は猫大好きである) 猫になつかれた幸せと、待ち合わせに間に合わなくなるストレスに板挟みにされた格好であるが、まぁ、今の俺のおかれた状況からすればそれはまだ微笑ましいといえる。 少なくとも待ち合わせをした女の子は多少遅れたくらいで臍を曲げるようなやつではないし、仮に臍を曲げて怒り心頭だとしても 缶ジュース一本で機嫌が直るお人よしなのだ。 その点、目の前にいる二人の美少女はやや性質が悪い。否、やや、というの寧ろ失礼に値するとすら思える。 片や警報ブザー常備で二言目には通報だの死ねだの(秘密だが俺は密かに彼女は鞄の中にスタンガンを忍ばせているのではないかと踏んでいる)ととても冗談が通じそうにないお堅い人間で、 約束を破りでもすればそれこそ仮に級友といえど命の保障すら危ぶまれるほどの危険度の高さを誇る。 もう片や危険度自体はさほど高くないものの、はその毒舌たるやこの上なしの古今無双(多分、桐乃をほんのちょっぴり凌駕してる)であり 口を開けば無尽蔵に放出される罵詈雑言に耐えうる精神の持ち主はこの俺を置いてほかにないに違いなかった。 それでも、とはいっても、所詮は年下である。 この俺様の手腕にかかればどうとでも料理できる…一人ひとりであれば。 つまりだ、今俺の置かれた状況を分かりやすく説明すると、寄りにもよって俺の知る限り最も危なっかしいこの二人の美少女とファミリーレストランでお食事ているのだ。 ちなみに俺はおごりでタダである。 …いやちょっとまて。 今もげろって言った奴いただろ?いたよな? 聞こえたぞおい!お前だよ、お前! 分かってないよ。お前は何も分かってない。 確かにさ、最初の文で例えた「野良猫に懐かれた」ってところにあたる「二人の美少女とお食事」ってのは嬉しいよ!? そりゃうれしいさ。健全な男子高校生なら誰だって悦ぶに決まってる。 だけどさ、不幸分が桁違いにデカイんだよ。もう、どうしようもないくらいに。 割合で言うと幸福1%対不幸99%。 板挟みってレベルじゃないんだよ。一方通行に押し流されてんだよ。 つか、注文して食事が来て今半分ぐらい食い終わってるんだけど未だに一言も喋ってないよこの二人! 「…うん、この新メニューの鬼おろしハンバーグけっこう旨いなぁ…」 「…」 「…」 ほらな!ほらな! さっきからずーーとこんなんだよ 時たま食器とナイフがカチャ、カチャと触れる音が居たたまれねぇよ! 俺は涙目で猛烈に湧き上がる嘔吐感に堪えながら鬼おろしハンバーグ定食を黙々と口に運んだ。 何かを入れていなければ、胃酸で胃に穴が開きそうだ。 何故こんなことになったのか。 実は、未だに俺も理解できていないのだが、起きたことを有りのままに話すと以下の通りである。 数時間前、俺とあやせは例のブザー事件により「不審者注意」なる看板設置された公園を避け、新たな会合場所を開拓しに町をさ迷っていた時だった。 俺のかぶっているキャップを見てあやせが自分のものであると気づき、俺がうなずいた。 「ああ、あの時のだ。悪いけどこういう状況だし、もうしばらく貸してくれないか?」 「お兄さんに貸した覚えはありませんが…まぁ、仕方ありませんね…」 渋々とうなずくあやせ。 そんなに俺にかぶられるのが嫌かとがっくりすると、何か閃いたかのようにあやせが此方を向いた。 「そうだお兄さん!」 「ん?」 「今から買いに行きませんか?帽子。」 「え?今から?」 「はい。」 立ち止まって改まるあやせ。 俺も足が止まる。 「実は私、前々からお兄さんにお礼がしたかったんです!」 「お礼って、…ああ、この前も言ってたな」 そういえばこの前電話で言ってたお礼って何だったんだろう? 「…以前のお礼はお気に召していただけなかったようですので」 「なぁ、その事なんだがこの前のお礼って一体なんだったんだ?」 むぅ、とあやせのほほが膨らむ。(←かわいい) 「もう其れは良いです!」 「え、そうなの?…ま、まぁ、それはともかく、お礼ってことは、お前が選んでくれるのか?言っとくけど俺はモデルが選ぶような帽子を買えるほど 金持ちじゃないぞ」 妹と違ってな。 「大丈夫です。値の張るものだけが良い物ではありません」 「つってもなぁ…」 煮え切らない俺の態度にあやせが少し苛立ちを含んだ目で俺をにらんだ。 「何かご不満でも?」 「いや、不満とかは無いんだが…、いまから東京に出るとなると時間が、な。」 まだ明るかったが、すでに午後の二時を回っていた。 「ああ、そんなことでしたか。大丈夫です。駅前に良いお店がありますから。」 「駅前?千葉駅の?」 「はい。以前仕事帰りに見つけたメンズショップなんですが、中々センスの良いものが多かったので」 ということは、態々俺の為に中に入って見てくれたという事のになるのか。 あやせは返事が遅い俺を不安そうに覗いてくる。 断る理由が無かった。といか、理由があっても断れないだろ、これは。 「じゃぁ、頼むかな。現役モデル様に。」 「はい、お任せください!」 …うっわ、笑顔超かわいいんだけど。 というわけで俺とあやせは駅前にあるというメンズショップ(狭い割には地上三階建てだった)に向かい、あーでもないこうでもないと悩みつつ(主にあやせが) お洒落でなおかつ学校にかぶっていけそうな灰色の網目の細かいニット帽を購入した。 ちなみに税込み3980円というお値打ち価格(だそうだ)なこのニット帽であるが、残念ながら俺はすでにその時全財産を殺虫剤に貢いでしまっていた。 そのことに気づいて金を銀行から下ろそうと店を出ようとする俺をあやせが呼び止め 「では私が払いましょう」 といって返事を待たずにあっさりと会計を済ませてしまった。 男前というかなんというか、いや、それ以前に年下の、それも中学生に帽子を買ってもらうとか凄い情けない。 というかそれ以前に中学生に薦められた店で中学生に選んでもらって中学生に払わせる高校生ってどうよ? …まぁ、いいか。 いいよな? だってあやせからのプレゼントなんだぜ?ふひひ…。 いいだろ? へへへ。 店の奥で店員がヒソヒソ言ってたって気にしない。気にしなーい。 …聞こえてんだよ…二言目には地味とか…別に貢がせてもねぇよ! 店を出て、猫耳が見えぬよう物陰に隠れ、早速買ってもらった帽子をかぶる。 「似合うか?」 「ええ、もちろん。出来れば服も新調したいところですが…さすがにそれは自分で払ってくださいね」 ジョークのつもりなのかあやせはふふふ、と笑った。 なんていうか、笑い方に感心して一瞬ほうけてしまった。 いや、正直言おう。見惚れた。 なんて上品な笑い方なんだろう。正に女性の笑い方、って奴だ。 俺の周りでそんな風に笑えるのははっきり言ってあやせだけだと思う。 例えば麻奈実はクスクスと小動物のようにわらう。これはこれで可愛いが、いまひとつ女性という感じがしない。 桐乃は論外でゲラゲラといかにも餓鬼っぽく笑うし、黒猫に至っては「ックックック」って何処の悪役だよお前は。 「――――あら、先輩?」 そんなことを考えてたからさ、思わず振り向いてしまったわけですよ。 罪悪感たっぷりな顔でな。 「く、黒猫ぉ!?」 「猫?」 俺の背後であやせが首をかしげるのが気配だけで分かった。 黒猫は制服姿でたった今裁縫店から出てきたと思しき布などが入った袋を持って立っていた。 そういえば夏コミが近い。 黒猫は俺とあやせを交互に見比べえて、なにやら考え込んだ後、邪悪な微笑をもらした。 「これはこれは高坂先輩ではありませんか。いかがしましたかこんな所で?」 あからさまに含みを持たせた敬語が怖いです。 超・怖いです。 「あ、えーっとこれはだな」 「あら?おかしいわね、そういえば今日田村先輩から『京ちゃん今日は風邪でお休みなの。昨日は元気だったのに、心配だなぁ…』 というお話を伺ったのですが、私の聞き違いでしょうか?」 「ぅぁ」 言葉に詰まる俺。 あやせが小声でつぶやいてきた。 「お兄さん、この方って以前ビックサイトで…」 「ああ、桐乃の向こう側の友達」 「なにかあらぬ誤解をさせたようですね…」 「………」 そうだよね。誤解だよね。 うん。わかってるよ。 「でもとても心配そうにしておりましたので聞き間違いではないと思いますが…では見間違いでしょうか? そうですよね、まさか風邪を引いて休んでらっしゃるはずの先輩が実はピンピンしていて何処の馬の骨と分からない女と仲良く駅前でデートなんて ありえませんよね?」 俺とあやせは二人して突っ込んだ。 「っちょ、馬の骨って」 「で、デートじゃありません!」 反応するのそっちかよ。 そこまでして否定しなくていいじゃん。 ぐすん。
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1298520872/244-259 初夏。 早朝。 今日も朝から快晴だった。 そして今日は祝日で、さらに今日から長い夏休みの始まりであり、好きなだけ惰眠を貪れる期間でもあった。 しかし… 「うー…今日も暑っちーなぁ…」 あまりの暑さに目が覚めちまった…。 もうちょい寝ていたかったんだけどな…。 それにしても…本当に暑っちー…。 おかげで下着まで汗でびしょ濡れだよ…。 「しょうがねー…着替えて朝飯にでも行くか…」 俺は着替える為に、寝巻を脱ぎ始めた。 その頃、リビングでは… 「桐乃ー、ちょっと悪いけど京介を起こしてきてくれない?」 「えー…? 面倒くさいなぁ…」 今日は休日。 だけど我が家は、食事は平日も休日も関係なく、いつも決まった時間に食べるのが習わしになっている。 もうすぐ朝食の時間で、お母さんは準備の仕上げに入っていた。 そしてあたしはお母さんに頼まれて、兄貴を起こしに行く。 本音を言うと面倒くさいけど、朝ご飯抜きはさすがに可哀想だもんね。 うんうん、あたしってホントできた妹だよねー♪ 階段を上がって兄貴の部屋の前に来たあたしは、ノブに手を掛けて扉を開いた。 寝巻を脱ぎ、たまたまあったタオルで身体を拭いて、下着を替えようとパンツを脱いだ瞬間だった…。 ガチャ 「兄貴、そろそろ朝ご飯だ…よ…」 妹様が、何の前触れもなく、ノックもせず…扉を開けやがった…。 今の状況を説明すると… 俺は下着を着替える為にパンツを膝ぐらいまで脱いだ。 因みに上着は一切何も身に着けていない。 つまり、ほぼすっぽんぽんの状態だ。 それに対して桐乃はTシャツに短パンというラフな普段着姿で、ドアノブに手を掛けて扉を開いた状態で固まっている。 目線は…俺のナニに釘付けになっていやがるけどな…。 「う…」 「き…」 「うわああああぁぁぁぁ!!!」 「きゃあああああぁぁぁぁ!!!」 「あ…ああああ…あんた、何そんな汚いモノを見せてんのよ、このヘンタイ!」 「るせー! てめー、人が着替えている最中にいきなりドアを開けやがって!! ノックぐらいしろといつも言ってるだろうが!!!」 「いいから、その貧相なモノをしまいなさいよ!!」 「な…だれが貧相だ! てめー、他人のモンでも見た事あんのかよ!!」 「な…! あ…あるワケないでしょ!! ヘンタイ!!!」 桐乃が涙目で俺を睨んできた。 てのか、そんなに見たくなけりゃ扉閉めればいいだろうが…。 「…で…? てめーはいつまで俺の着替えを見てるんだ…?」 俺はジト目で桐乃に尋ねた。 するとどうだろう、桐乃は気付いた様子でハッとして、みるみる顔が真っ赤に染まり… 「…ぐす…っ…知るか! バカ!!」 バタン!!! 桐乃は逆ギレして、涙を浮かべながら扉を乱暴に閉めた。 …少し大人げなかったかな…。 いや、今回ばかりは俺が被害者なんだから、譲歩する必要はねーよな。 まぁ…あとであいつの我侭にでも付き合ってやれば、機嫌は収まるだろ。 そういう結論に達した俺はとっとと着替えて、桐乃から少し遅れてリビングに向かった。 「お早うー」 俺は朝の挨拶と共にリビングに入る。 そこにはお袋と共に、さっき怒って先に降りて行った桐乃が座っていた。 桐乃は…まだ顔を真っ赤にして怒っている様子だ。 その証拠に、ギロリ…という擬音が聞こえてきそうな形相で俺を睨んできたよ。 あーこわ。 「あんた、桐乃に何したのよ? さっき泣きながら降りて来たわよ? 理由聞いても答えてくれないし…」 お袋が俺を諌めるように言ってきた。 なんだ、桐乃は何も言ってねーのか…じゃあ俺も答える必要無いな。 「別に、大した事じゃねーよ」 俺はあまり取り合わないようにして席に座った。 隣に座る桐乃がまだ横目でにらむので、俺は桐乃の頭をくしゃっと撫でる。 「さっきは言い過ぎた。 悪かったな」 桐乃は真っ赤な顔のまま俯いて、「ん…」と首を少しだけ縦に振った。 いつまでも喧嘩しててもしゃーないし、俺が折れるつもりで桐乃に謝る。 これで御破算でいいよな。 「「いただきます」」 それじゃ、朝飯でも食べますかね。 「ごっそーさん」 「御馳走様でした」 俺たちは同時に朝食を終え、一旦自室に戻ろうと階段を上る。 階段を上り切り、部屋に入ろうとした時、桐乃が口を開いた。 「あんた、今日の予定は?」 今日の予定? 桐乃がそういうのを聞いてくるとは珍しいな。 「午前中は麻奈実と図書館で受験勉強。 午後からは一応空いてる」 別に隠す必要も無いので、俺は正直に答えた。 「チッ…地味子か…」 麻奈実と一緒というの部分に反応して、桐乃は露骨に嫌を顰めて盛大な舌打ちをかましてきやがった。 今更だからいいけどさ、そういうのはせめて当事者の居ないところでするものだぞ、妹よ…。 「じゃあ午後からあたしに付き合って」 ほらきました。 多分そうじゃないかと思って、午後は空けといたんだよな…。 「へいへい。 で、どこへ遊びに行きたいんだ? アキバか?」 こいつの事だから、俺と一緒の場合はファッション系ではなくオタク系の場所だろう。 大方アキバか新宿…ぐらいじゃねーかな…と思って聞いてみたら… 「アキバもいいけどさ、今日はブクロに行きたいんだよね」 池袋…予想外の回答が来たぞ…。 池袋っつったら…瀬菜のヤツが以前『池袋には乙女ロードがあって、そこがあたしたちのホームだ』とか言っていた気がするが…、ま…まさか… 「き…桐乃…お前まさか…BLに転んだワケじゃ…ゲフぅッッ!!!」 お…ふ…不意打ちでボディーブロー…かまされた…ゲフ…。 腹を押さえて桐乃を見たら、真っ赤になって怒っていた…。 「ふざけんな! あたしがBLに転ぶワケないっしょ!! キモい事言うなっての」 どうやら桐乃にとって、BLは否定しないが相容れないものらしい。 そりゃあ今の今まで妹ゲーやってたんだから、まさかとは思ったけどさ…だからって、いきなりボディーブローはねーだろうよ…。 「あたしが付き合ってほしいのは、しすしすオンリーで、 ホントは午前中から行きたいけど、あんたも受験生だから我慢してあげてんじゃん」 「しすしすオンリー?」 聞き慣れない言葉が出てきたぞ? 俺が頭に疑問符をつけていると、桐乃は『そんな事も知らないの?』的な顔をして、腰に手を当てて説明してきた。 「しすしすオンリーってのは、しすしすのみをテーマにした同人誌即売会で、他のジャンルでもそういう一定のテーマに限定にしたオンリーイベントが、毎週都内のどこかで必ず行われているの。 で、今日は池袋のサンシャインシティでそれが行われるってワケ」 なるほどな。 同人誌即売会はコミケだけだと思っていたから、そういうのがあるとは知らなかったぞ。 本当に同人誌ってのは奥が深いな…。 「で、開始が11時なんだけどさ…」 桐乃はちらっと上目遣いで俺を見てきた。 …そういう視線は反則だろう…お前…。 俺はちらっと腕時計に目をやった。 8時40分か…ここから池袋だと…2時間近くかかるな…。 午後からだと間違いなく間に合わないだろう。 しゃーねーか…。 俺は自室に入り、扉を開けたままケータイを持って、ある電話番号にダイヤルした。 「もしもし麻奈実か? 悪いけどさ、今日の勉強会だけど…ドタキャンさせてくれ。 この埋め合わせは必ずするから。 ああ、悪い。 明日は必ず。 ああ。 じゃあな」 麻奈実に勉強会中止の連絡を入れて、俺は桐乃に向き直った。 「桐乃、池袋に行くから準備してくれ」 俺の言葉に桐乃はきょとんとして、頭に「?」マークを浮かべている。 「え? …てのか…勉強会はいいの…?」 「今日1日くらい休んだって影響はねーよ。 それよりも…しすしすオンリー、楽しみにしてるんだろ?」 桐乃は暫く呆然としていたが、俺の言葉の意味を理解したのか、顔に少しずつ笑みを浮かべて… 「うんっ!」 最後には天使の様な笑顔で慌てて自室に戻っていった。 そして約2時間後…俺たちは池袋のサンシャインシティに着いた。 コミケ程ではないとは言え、けっこうな人数が並んでいる。 桐乃が準備出来てすぐに俺たちは千葉駅へと向かい、千葉~快速~錦糸町乗換で各駅停車~飯田橋で地下鉄乗換~東池袋というルートを使って1時間半で行けた。 サンシャインは池袋が最寄りかと思っていただけに、このルートはけっこう便利だ。 桐乃は俺の分を含めてカタログを2部購入し、早速サークルチェックに取り掛かる。 カタログを買って来た時の桐乃の顔は、まるで子供みたいに楽しそうだったな…。 因みに俺は最初から桐乃の荷物持ちのつもりで来たから、カタログのチェックはしていない。 それから少しして、一般入場が始まった。 それと同時に桐乃はサークルチェックを終えて、臨戦態勢に入る。 今回の参加サークル数は大体80ぐらいだったので、サークルチェックも簡単だったみたいだ。 「兄貴、入ったらすぐに○○△に並ぶから、ついてきて!」 桐乃の頭では既にシミュレーションが出来ているらしい。 ホント、自分の趣味になると、こうも人間って変わるものなのね…。 俺は半分呆れつつも、桐乃に従って行動を共にした。 それから2時間。 全てのサークルを回り終えた桐乃と俺は会場を後にした。 けっこう豊作だったらしく、桐乃はとても御満悦な顔をしていた。 その分だけ同人誌の冊数もあるから、手提げ袋が手に食い込む分だけ重いんだけどな…。 池袋駅へと向かう途中のサンシャイン通りで俺たちは軽く昼食を摂り、ゆっくりと雑談を交わしていた。 「兄貴…今日はあたしの我侭に付き合ってくれて、ありがとね」 「おいおい、どうしたんだよ急に」 今日はえらく殊勝な事を言ってるな。 「だってさ…受験生じゃん、兄貴…。 夏コミにも付き合ってもらうのに、さらに一日あたしの為に潰してくれて…」 どうやら俺が麻奈実との勉強会をドタキャンしたのを気にしているようだ。 「大学受験てさ、高校受験の比にならないぐらい…難しいんでしょ…? だから…午後だけでよかったのに…」 「いいんだよ、桐乃」 俺は桐乃の頭の上に手を置いて、軽く撫でてやった。 「今日桐乃に付き合うと決めたのは俺の意思だからな、お前が気にする必要はねーよ。 だから今日は一日中、何にでも付き合ってやるぜ」 桐乃の頭を撫でながら、俺は桐乃に気にするなと伝えると、桐乃は顔を真っ赤にして、軽く頷いた。 これ…今朝も同じ様な事をした気がするな…。 「よし、じゃあ次はどこへ行きたい? さっきも言ったが、今日はどこにでも付き合ってやるよ」 「………ホントに…いいの…?」 まだ桐乃は気にして聞いてくるので、『気にするな』と、俺は桐乃に対して首を縦に振って応えた。 その答えに桐乃は、今朝の様な満面の笑みで返してくれた。 「じゃあ、次はアキバに行こ♪」 それから数時間後、俺たちはとらのあな、メロンブックス、ソフマップやラジオ会館などのアキバ散策を満喫して、自宅へと向かっている。 桐乃から『ささやかなお礼』ということで、帰りは東京駅からちょっとだけ贅沢してグリーン車で千葉まで戻った。 俺は普通車でもいいと言ったけど、桐乃はこういう時は絶対に譲らない。 その辺りは親父そっくりで頑固だなと思う。 でもまぁ…今日一日ずっと歩きまわったから、桐乃のこの心遣いは正直言って有難かったな…。 そして夜。 晩飯が終わった後、桐乃がシスカリ対戦を希望してきたので、俺は桐乃の部屋に向かった。 対戦ゲームが終わり、そろそろ自室に戻ろうかという時だった。 「ちょっと待って…」 と、桐乃は俺を呼び止めた。 何か思案顔をしていた桐乃はパソコンチェアを立ったかと思うと、扉の鍵を閉めてベッドに座る。 鍵を閉めた…って…一体何を考えているんだ? コイツは…。 「あ…あのさ…最後に…もう一つだけ、お願いがあるんだけど…」 桐乃は何かを躊躇う様に、重く口を開いた…。 「あんたのソレ…もう一度…じっくりと見せてくんない…?」 ……はい…? 何か、とんでもない事をぬかしましたよ、この妹!? お…おおお…俺の…モノ…見せろって… 「おおおお…お前、何考えてやがるんだ!? 俺の見せろって、変態か!!」 「あんたが朝っぱらからあんなの見せるから、今日一日ずっと頭から離れないんじゃないのよ! 責任取ってよ!!」 「責任取れって…アレはお前が悪いんだろうが!」 ああもう…忘れてたのに蒸し返しやがって、ホントこいつが何を考えてるのかたまに分からなくなるわ…。 「それに…兄貴、『今日一日は何にでも付き合う』って言った…」 ええ!? それって…こんなアホな事も含まれるの!? 確かに言ったけどさぁ…。 ああもう…好きにしろ!! 俺は開き直って桐乃に尋ねた。 「…で? 責任取れって…俺のナニ見てどうするつもりなんだよ…」 「…じっくり観察する」 はあ? 観察?? 「エロゲーじゃモザイクかかって分からないから…実物がどんなのか…見てみたいかな…って…」 …興味本位っすか…。 俺だって男なんだけどなぁ…分かってるんだろうか、こいつは…。 しゃーないから、一応釘刺しておくか…。 「あのな、俺だって男だぞ。 それが何を意味するのか分かってるんだろうな?」 桐乃は真っ赤な顔になって目を見開いた。 次に機関銃のような罵詈雑言が来るものだと警戒していたら… 「…い…いいよ…アンタだったら…」 …はい…? 「あの…桐乃さん…?」 「だから、兄貴だったら…その…間違いが起こっても…いい…って言ってんの…。 何度も言わせないでよ…」 そ…それって…。 「つべこべ言ってないで、早く見せればいいでしょ!!」 桐乃はヤケっぽく文句を言ってきたと同時に、素早くベルトに手を掛けて…一気に俺のスポンとパンツを下ろしやがった…。 そして…露わになる、俺のモノ…。 それを桐乃が興味深そうに凝視している…。 「うわぁ………お…思っていたより…その…グロテスク…?」 グロテスクって…まぁ…そうだろうなぁ…。 初めて見るんだろうから、そんな印象を持ってもおかしくないわな…。 「へぇ…」 桐乃は俺のを興味深げにジロジロと色々な角度から観察しているが…これ…なんて羞恥プレイだ? 俺が恥ずかしい思いをしているだけじゃねーかよ…。 「…あ…あのさぁ、桐乃…。 その…ジロジロ見られると…恥ずかしいんだが…」 「…もうちょっと我慢してくんない…?」 桐乃は俺の意見を却下した…。 うう…涙が出そうだ…。 「ねぇ…兄貴…」 「あん…?」 桐乃が上目使いで俺を呼ぶものだから、俺は桐乃に顔を向けた。 すると… 「今日一日…ホント…ありがとう…。 今からのは…全て…今日のお礼だから…」 と、一言だけ口を開いて… 「ん…!」 「………!?」 何を思ったのか、桐乃は急に…俺の唇を塞いできた…。 そしてそのまま舌を俺の口の中に侵入させ、口腔内をくまなく貪り始めた。 「んむううぅ…!?」 「ん…んむ…っ…んん…っ」 「ん…んんん…んむむ…」 あ…やべ…桐乃の舌の気持ちよさに…頭がボーっとしてきた…。 そしてそれに反応するように…俺のモノも…カチカチに硬くなりましたよ…。 「ぷは…」 桐乃の口が俺の顔から離れ…俺と桐乃の唇を、透明の唾液が糸を引く様に伝う…。 そして、桐乃は視線を…硬くなった俺のモノに移した…。 「…ごく…っ…これが…男の人の…」 桐乃が艶やかな表情で俺のを凝視し、その直後… 「はむ…」 桐乃は躊躇う事無く…俺のを…頬張った…。 「ん…んちゅ…んん…」 兄貴のアレを見ているうちに、気持ちが高ぶっちゃって…あたしは…兄貴のを頬張っちゃったんだけど…せっかくだから…兄貴にも気持ちよくなってもらいたいな…。 あのゲームのフェラチオのアニメーションシーンを参考にしてるんだけど…確か…こんな感じ…だったかな…。 「お…き…桐乃…すげ…気持ちいい…っ…」 兄貴…あたしの口で気持ちよさそうにしている…。 ちらっと表情を見たけど…なんか…可愛い…♪ もっと…もっともっと気持ちよくなってもらお…。 あたしは兄貴のを隅々まで舐め回し、時には竿を甘噛みし、時にはぶら下がっている袋を咥えて口の中で舐め回しと、色々と試してみた。 そして兄貴が一番気持ちよさそうにした場所…その…兄貴のモノの先っちょと亀の頭の首筋みたいな部分を、重点的に舌先で攻める様に舐め回した…。 「やべ…桐乃…出ちまう…」 兄貴がそろそろ限界のようだから、ちょっと苦しいけど…あたしは兄貴のを再び口に含み、それを根元の部分…あたしの喉の奥まで達するぐらいまで深く咥え込んだ。 その瞬間… 「うおおお…っっっ…!!」 兄貴のがあたしの口の中で激しく震え、喉奥に精液を射精しているのが分かった…。 喉から逆流した精液があたしの口の中に溜まっていく…。 生温かくて…苦くて…ヘンな味がして…そして臭い…。 だけども嫌ではない精液独特の味と匂いが、口腔内に充満していく…。 「んぐ…んぐ…」 あたしは頑張って精液を飲み下そうとするが、兄貴のからは未だに大量の精液が放たれていて…とても飲み干せる量ではなくなってしまった…。 そして溜め込まれなくなってしまった精液があたしの口の端から溢れ出し…あたしの顎から首を伝い、あたしの服へと染み込んでいく…。 やがて放出が止まり、兄貴はあたしの口からアレを抜いていく…。 兄貴のはあたしの唾液と兄貴の精液で滑っていて、てかてかに光が反射していた…。 「…はぁ…はぁ…はぁ…」 漏れた分以外の兄貴の精液を何とか飲めたのはいいけど…あたしは身体が火照っていて、頭がボーっとして…何も…考えられなくなっていた…。 いかん…あまり気持ちがよくて、思わず桐乃の口に射精してしまった…。 桐乃はボーっとしたままだし…大丈夫か…? 「桐乃…大丈夫か…?」 「…あ…兄貴…」 何とか気が付いたみたいだな…。 「桐乃…一応確認する…。 俺…もう…収まりつかねーぞ…いいんだな…?」 口に出しちまったとはいえ、俺たちは兄妹だから…今ならまだ引き返せる。 俺は警鐘のつもりで桐乃に尋ねた。 しかし… 「いいよ…」 桐乃は拒絶しなかった…。 本当にいいのか…? と再度聞くと、桐乃は微笑みながら答えを返して来た。 「兄貴だから…いいよ…。 あたし、最初から…兄貴に…全てあげるつもりだったからさ…」 あ…やべ…。 この笑顔と答え…反則だろ…。 俺は桐乃が愛おしくなり…唇を塞いだ。 唇を離すと桐乃は一度俺を離れ、ゆっくりと…そして1枚1枚丁寧に自分の衣服を脱いでいく。 そして桐乃は恥ずかしながらも…俺の目の前で生まれたままの姿になった…。 桐乃の裸は…陸上競技で鍛えられて、さらにモデルをもやっている所為か…とてもバランスが取れた、とても美しい姿だった…。 俺が桐乃の姿に見惚れていると、桐乃は再びゆっくりと俺に抱きつき、俺に抱き抱えられるようにしてベッドに横たわった…。 「桐乃…」 「いいよ…きて…お兄ちゃん…♥」 俺たちはお互いに頷き合う。 そして俺は自分のを桐乃の秘所に充てがい… ズプ…ヌププ… 「んん…んんん…っっ!!」 少しずつ体重をかけて… 「い…痛…っっ…!!」 根元まで…全て挿入した…。 「桐乃…痛くないか…?」 俺は耳元で桐乃に囁いた。 だけど桐乃は涙を流していたが、嬉しそうだった…。 「少し…痛いけど…、それよりも…兄貴に挿入れてもらった…幸せの方が大きいかな…へへ♥」 くうぅ~~~…っっ!! すげー嬉しい事を言ってくれるじゃねーのよ、このお姫様は…。 「兄貴…動きたいんでしょ…? いいよ…♥」 挿入れたまま暫く動かずにいると、桐乃が求めてきた。 桐乃が痛がらないように気をつけて、俺はゆっくりと…抽送を開始した…。 「…ん…んん…っ…」 とりあえず一往復だけストロークしてみたけど…桐乃…眉を顰めて…痛そうだな…。 「桐乃…無理するなよ…。 あまり痛そうだったら…その…止めてもいいんだぞ…?」 「いいよ、そのまま…続けても…兄貴が気持ちいいなら、あたし…それで十分だからさ…」 桐乃…お前ってやつは…。 こんな状況なのに俺に心配かけまいとして…。 「今だから言うけどさ…あたし…小さい時からずっと…兄貴だけをみてきたんだよ…?」 桐乃…? 「幼い時にさ…『お兄ちゃんのお嫁さんになる』って言ったの…覚えてる…?」 ああ…覚えてるさ…。 「途中、冷戦状態になっちゃったけど…あたし…今でもずっと…あの言葉を心の中で温めてた…。 だから…今…夢が叶って…とても幸せだよ…」 桐乃は涙を零しながら、俺にこれ以上ない笑顔を向けてくれた。 「お兄ちゃん…好き…愛してる…」 桐乃…俺…本当に…幸せ者だ…。 小さい頃からずっと…俺の事だけを見ていてくれたなんて…。 なのにお前を長い間無視してしまって…本当に…申し訳ない…。 俺は感極まってしまい…瞳から…涙を零してしまった…。 その涙は少しずつ…少しずつ…桐乃の顔を濡らしていく…。 「桐乃…俺も…お前の事…愛してる…」 俺は心の奥底にあった本当の気持ちを、桐乃に伝えた。 「何があっても俺たちはずっと一緒だ…兄妹だとかはもう関係ない…。 俺が社会に出て生活できるようになったら、一緒になろうな…桐乃…」 そして…そのまま…俺はプロポーズした…。 俺の言葉に目を大きく開いた桐乃は…暫くして…とても嬉しそうな顔で…その瞳から大粒の涙を溢れさせた…。 「お兄ちゃん…」 「桐乃…」 俺たちは自然に顔を近づけて…唇を重ねた…。 そして俺はそのまま、抽送を再開した…。 「んんん…んん…っ」 俺の先端が、桐乃の膣内の壁のような所に当たり、その瞬間…桐乃の身体が激しく震えた。 どうやら子宮口に当たったみたいだ。 「お…兄ちゃん…っ…すご…気持ちいい…よ…っ」 抽送を繰り返していくうちに桐乃は痛みを感じなくなったみたいで、その代わりに呼吸が激しくなり、喘ぎ声を発するようになった。 そして結合部からは桐乃の潤滑液が溢れ出すようになり、さらに抽送がスムーズになる。 次第に俺の腰の動きが激しくなっていき、俺ももっともっと桐乃で気持ちよくなろうとさらに動きを加速させる。 「あ…ああ…♥ おにい…ちゃ…激し…♥」 「桐乃…お前の膣中…すげ…気持ちいい…」 「も…っと…もっと…激しく…して…♥」 「桐乃…桐乃…っっ!」 パンパンパンッ! という肌と肌が叩き合う音が室内に響き、俺と桐乃はお互いを激しく求め合う。 「だ…め…だめ…! あたし…イっちゃう…♥」 「俺も…そろそろ…出ちまう…っ…」 桐乃は両脚を俺の腰に回し、俺のが抜けないようにしっかりと咥えこむ形をとると、俺も桐乃の膣内に射精しようと激しい抽送を繰り返す。 俺もそろそろ限界が訪れようとした。 「桐乃…イクぞ…イクぞ…!!」 「きて…お兄ちゃん…♥ あたしの膣内に…出して…いいからぁ…♥」 「桐乃…っ」 「お兄ちゃんの…精液…全部…あたしに…ちょうだい…!!」 桐乃…桐乃…っ! 俺の忍耐は限界を超えて… 「桐乃おぉ…っっ!!!」 ビュルルルルルルッッ!! ビュルルルルルッッ!!! 「……………!!!」 桐乃の膣内に大量の精液を射出した。 「…! ………!! …………!!!」 桐乃は俺の射精を子宮口で受け止め、身体を痙攣させてイキながら必死になって声を殺し、俺の身体にしがみつく。 「き…桐乃……きりの…おぉ…っっ」 ビューーーッッ!! ビュルルルルッッ!! ビュプッビュプッ!!! 「はぁ…はぁ…お兄ちゃん…おにい…ちゃ…ん………っっ」 ビュクッ…ビュプッ… 長かった射精がやっと終わり…俺は脱力して桐乃に覆い被さった。 桐乃も俺の背中に両腕を回して、俺を受け止めてくれている。 お互いの身体にき、心地よい疲労感が漂っていた…。 「桐乃…」 「お兄ちゃん…」 俺たちは互いに見つめ、微笑み合いながら…自然に唇を重ねた…。 「幸せになろうな、桐乃…」 「うん…♪」 これからは大変な困難が待ち構えているだろう…。 だけど、俺たちはそれを乗り越える覚悟で結ばれた。 だから、何があっても俺たちは一緒に生きていく。 可愛い妹でもあり、愛する異性でもある桐乃と共に…。 「大好きだよ、お兄ちゃん…♥」 END